企業が人的資本経営を推進する採用活動のポイントとは|人事戦略が重要
採用代行

近年、人材を資本として捉えて、投資する存在と考える人的資本経営が重要視されており、採用活動に大きな影響を与えています。
本記事では
・採用活動が人的資本経営において重要な理由
・人的資本経営×採用の始め方
・人的資本経営を実現するために重要な採用活動のポイント
についてご紹介します。
人的資本経営を実現するうえでの採用活動方法や、日本企業の取り組み例も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1.人的資源と人的資本の違い
以前、人材は経営資源として、効率的に管理・活用する人的資源とされていました。
しかし昨今では、人の知識や能力を資本として捉え、投資する存在と考える人的資本が主流になってきています。
個々が持っている知識・スキル・能力・資質などを引き出す、また新たな業務に必要な知識やスキルを学ばせることで、企業の生産性や成長性を向上させるのが目的です。
採用においても人的資源では「人材=コスト」という考え方でしたが、人的資本では「人材=資本・投資」と考えます。
したがって人的資本では、新卒のみを大量に採用してコスト削減をするよりも、長期的に見て自社の価値を上げてくれる多様な人材を戦略的に採用します。
2.なぜ人的資本経営が注目されているのか
人的資本が注目される背景としては、主に以下の3つが挙げられます。
| 背景 | 詳細 |
|---|---|
| ①ESG投資の広がりと米国での開示義務化 | 環境や社会への配慮、企業統治に積極的に取り組んでいる企業に投資を推進するESG投資が世界中で広まるなか、企業は人的資本の可視化を求められている。加えて米国では2020年8月、証券取引委員会が要求事項を改定し、人的資本に関する情報開示を義務づける規定を新設。 |
| ②少子高齢化がもたらす労働力の減少 | 日本では少子高齢化が加速する中、超高齢化社会に突入しており、労働力の減少や医療人材の不足、事業継承といった問題への対策が急務となっている。解決方法の一つとして、企業は人材への投資を積極化する人的資本経営を実践し、労働生産性を向上させて企業価値を高めることが必要とされている。 |
| ③D&I経営(ダイバーシティ&インクルージョン経営)の推進と新しい価値を生み出す必要性 | 就業人口の減少やグローバル市場での競争が激しさを増すなか、多様な人材を積極的に採用・育成・活用することが不可欠になっている。さらに新しい価値を創造する取り組みを進め、その内容を株主やステークホルダーへ開示し、投資を受けて成長していく必要性が高まっている。 |
3.人的資本経営における採用活動とは
人的資本経営における採用活動は、人財投資と考えられています。
経済産業省が人的資本経営に取り組むうえでの大切なポイントを提示している資料「人材版伊藤レポート2.0」でも、「企業はさまざまな経営上の課題に直面しているが、これらの課題は、人材面での課題と表裏一体」という文言があります。
つまり人的資本経営を実現するためには、人材戦略を基盤とした採用活動が重要です。
加えて人材戦略だけでなく、経営戦略と連動させることが重要ともあります。
人材戦略と経営戦略を連動させるにはまず、企業理念や存在意義を振り返り、これまでの成功体験にとらわれず変化に対して柔軟に対応できる強靱性を高めていくことが大切です。
そのうえで経営陣、取締役会、投資家のそれぞれが役割を全うする必要があります。
4.人的資本経営において採用活動が重要な理由
人的資本経営において採用活動が重要とされる理由は、主に以下の3つがあります。
・人材不足の深刻化
・転職希望者の増加
・内定辞退率の増加
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1.人材不足の深刻化
帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)」によると、正社員が不足していると感じる企業の割合は53.4%で、コロナ禍の2020年4月以降では最も高い数値です。
人手不足による経営破綻を防ぐには、人的資本経営の人材に投資する考え方で採用活動を進めなければいけません。
自社に必要なターゲット人材を確保するために、報酬体系や成果への評価制度の見直しをおこない、多様な属性や働き方を積極的に受け入れて競合他社との優位性を確保することが重要です。
4-2.転職希望者の増加
総務省が2023年12月に発表した「直近の転職者及び転職等希望者の動向について」によると、就業者のうち転職した方は325万⼈と前年に比べて12万人増加し、6期連続での増加という結果が出ています。
加えて、転職等希望者も1,035万人で前年と比較すると78万人の増加となっており、今後も転職希望者は増加が見込まれています。
人手不足の現代において、転職や早期離職は企業において大きなダメージになるので、福利厚生の見直しやリスキリング制度の導入・強化などで定着率を上げる対策が重要です。
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4-3.内定辞退率の増加
株式会社リクルートが運営する就職みらい研究所の「就職プロセス調査(2025年卒)」によると、2025年3月卒業時点の大学生の就職内定率は98.8%で、そのうち内定辞退をしたことがある学生の割合は63.8%でした。
平均内定2.64社を得ていて、1.61社を内定辞退している学生優位の買い手市場のため、企業の競争率は年々高まっている状況です。
優秀でマッチ度の高い人材を確実に確保するためには、人的資本の人材に投資する考えが必要不可欠です。自社に入社するメリットをアピールするため、仕組みの見直しや強化をしましょう。
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5.人的資本経営×採用は人事戦略から始まる
採用を成功させて理想的な人的資本経営を実現していくには、人事戦略が重要なポイントです。
人的資本経営における人事戦略を立てる際に必要な以下の2つの取り組みについて、それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
・戦略的な人材採用と配置
・多様な人材の採用
5-1.戦略的な人材採用と配置
人的資本経営においては単に現在必要な人材を採用するのではなく、目標の経営戦略を達成するために必要となる人材要件を考え、計画的に人事戦略を進めていかなければいけません。
戦略的に人材を採用・配置・評価・育成するための手順は、以下を参考にしてみてください。
1.まず、CEO(最高経営責任者)やCHRO(最高人事責任者)が中長期の経営戦略実現に向け、各事業で求められる人材の質と量を整理します。その内容をもとに、現状との差を明らかにしたうえで人事施策を立案しましょう。
2.経営戦略の実現に向けて必要な人材と現状との差を踏まえて、できる限り早い段階で社員の再配置や外部からの採用を検討・実行します。また、採用での失敗を避けるには、人材要件を正確に定義することが重要です。
3.新卒の一括採用だけに限らない学生採用の方針を策定しましょう。海外への留学やギャップイヤーで経験を積んだ学生も入社しやすくなり、人材の幅が広がります。中長期で見た経営戦略を実現するための人事施策に基づいて採用・選考戦略を策定・開示すれば、多様なスキル・経験を持つ人材を集めやすくなります。
4.イノベーションの創出や事業変革を期待できる人材として、博士人材や高度な専門性、独自の構想力を持つ人材採用戦略も検討しましょう。
上記の手順は、自社が目指す経営戦略の達成に必要な人材の質・量を定量的に把握するためにも欠かせません。
また、必要な人材要件の定義が明確になるので、より採用基準の精度が上がり、採用活動の成功率もアップします。
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5-2.多様な人材の採用
人的資本経営において中長期的に企業価値を向上させていくために、多様な人材の積極的な採用が欠かせません。
さまざまな専門性や経験、感性や価値観を取り入れることで、新たな変革が生まれ続けます。
ただし、単に多様な人材の採用を目的にするのではなく、既存の社員を含めた全ての人材がいかに活躍できるかが重要なポイントです。
以下のような点を意識しながら、進めていきましょう。
・キャリア人材や外国人材の能力をモニタリングする
多様な知識や経験、スキルを持つキャリア人材や外国人材の採用を進め、イノベーション創出やグローバル展開を加速させましょう。
また、採用する人材がしっかり能力を発揮して活躍できる地位・役職レベルを用意してあげることが重要です。
・マネジメント方針を共有する
管理職が率先して多様な人材を受け入れ、組織を運営する能力を上げることが大切です。
多様な人材がいる環境で全員が相互に学び合える場を整備したり、スキルアップがしやすいようにオンライン学習を取り入れたりするなど、マネジメント側の意識改革が欠かせません。
多様な人材を組織全体で受け入れ、個々が能力を最大限に発揮できる環境を構築してはじめて、人的資本経営の実現へとつながります。
6.人的資本経営を実現する採用活動のポイント
人的資本経営を実現するためには、以下の4つのポイントを意識して採用活動をしましょう。
・現状と必要な人材要件を整理する
・企業文化とのマッチ度を採用基準に取り入れる
・人的資本経営への取り組みを発信してブランディングする
・応募者との対話を大切にする
6-1.現状と必要な人材要件を整理する
まずは経営戦略の実現を軸に、中長期的な視点から人材要件を定めましょう。
経営陣が各事業で中長期的に求められる人材要件を整理し、どのようなスキルを持つ人材が必要なのか、どの部署やポジションに何人必要かなど細かく数値化することが大切です。
次に、必要な人材を集めるのに効果的な採用手法を考えていきます。
戦略を練る際は経営層や役員、現場の責任者が密に連携を図り、現場の社員の意見も取り入れると、より成功率の高い採用活動ができます。
6-2.企業文化とのマッチ度を採用基準に取り入れる
企業文化や風土とのマッチ度の高さを採用基準に取り入れましょう。
人的資本経営における大切なポイントをまとめた経済産業省の「人材版伊藤レポート2.0」にも、人材戦略に求められる3つの視点の中に「企業文化への定着」があります。
人材戦略を策定する段階から理想の企業文化を見据えて計画することが重要です。
採用段階で企業文化と応募者の考え方や特性の相性が合うかどうかを意識すると、入社後の定着率アップにつながり、人材をレベルアップさせていく投資が続けられます。
6-3.人的資本経営への取り組みを発信してブランディングする
自社の価値観や方針と併せて、人的資本経営への取り組み内容やその結果を社内外へ発信してブランディングすることが大切です。
有名な企業でなくても、人的資本に関するアピールを積極的にすることで、学生や求職者から選んでもらえる確率が上がります。
人的資本経営では、自社の成長を助けるマッチ度の高い人材を採用し、定着してもらうのが最も重要なポイントです。
情報の発信は会社説明会や求人媒体、オンライン・オフラインを問わず幅広いチャネルでおこない、1人でも多くの求職者に自社の魅力を知ってもらいましょう。
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6-4.応募者との対話を大切にする
人的資本経営では従来のような企業側が一方的に応募者を見極めようとする体制ではなく、お互いに選び、選ばれる関係が重要視されます。
双方が対等な立場で対話することは、応募者の『情報の非対称性』による不安を解消し、心理的安全性を高める効果があります。その結果、企業の実態を正しく理解できたという納得感が醸成され、志望度の向上に直結します。
入社した場合に得られるスキルや目指せるキャリアパスなど、応募者が入社後のメリットを想像できるような情報をしっかり伝えましょう。
加えて、内定後も応募者と積極的なコミュニケーションを取り、内定辞退を防ぐことが大切です。
7.求職者が求める人的資本情報
2022年に実施されたパーソル総合研究所の「人的資本情報開示に関する調査【第2回】」では、内閣官房の「人的資本可視化指針」にある19の人的資本情報の各開示項目に対する関心度を調査しました。
対象者は1年以内の転職を検討している社会人と2024年春に就職予定の学生で、両者ともに「福利厚生」「賃金の公正性」に最も関心があることがわかりました。
ただし、双方独自の異なる観点もあります。
1年以内の転職を検討している社会人のうち優秀なスキルを持つ人材は、以下のような企業価値向上の観点における関心が強い傾向があります。
・リーダーシップ
・サクセッション・プラン(後継者プラン)
・採用
・エンゲージメント
・育成
中途採用で優秀人材へアピールする際は、上記に関する情報開示や関連する取り組みを示すことが重要といえます。
一方で学生は、以下のような社会課題に関する観点に関心があることがわかりました。
・育児休暇
・採用
・組合との関係
・児童労働/強制労働
・育成
学生へアピールする際は、社会的な課題に対してどのように向き合っているのかを伝えることが重要でしょう。
8.人的資本経営を推進する日本企業の取り組み例
人的資本経営を推進する日本企業が採用や人事戦略において、実際に取り組んでいる例をいくつか紹介するので、参考にしてみてください。
| 企業名 | 取り組み例 |
|---|---|
| アステラス製薬 | ・社内文化やマインドセットの浸透を広げるため、社長と社員の直接対話や、 ・社内の重要な経営ポジションへの登用を、応募者の国籍にかかわらず、 ・社内公募制度で、全社員が他部門への社内転職に応募できる |
| 花王株式会社 | ・経営トップを委員長とする「人財企画委員会」を毎月開催し、 ・障がいのある社員や女性社員の活躍推進について意見交換するミーティングを開催 |
| キリンホールディングス株式会社 | ・事業立上げや育成を目的に、ヘルスサイエンスやICTをはじめとする専門的な ・女性社員がライフイベントの前に職務経験を積む「早回しのキャリア形成」や、 |
出典:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書~人材版伊藤レポート2.0~実践事例集」
9.人的資本経営の推進には採用代行を活用すると効率アップ
人的資本経営の推進において、採用代行(RPO)を適切に活用すれば、業務効率と戦略性アップの両立が可能です。
採用代行に委託できる内容は、会社によっても異なりますが、主に以下の業務が挙げられます。
・採用戦略や計画の設計
・ターゲット人材に合わせた採用チャネルの選定や運用管理
・応募者対応や書類選考のチェックやスクリーニング
・面接日程の調整やリマインド対応、評価シートへの入力、合否連絡
・内定通知、内定者とのコミュニケーションやフォロー
採用代行に委託すれば人事戦略や要件定義など、より重要な業務に集中できる時間が増え、採用のプロによるアドバイスも取り入れられます。
ただし、人的資本経営を成功させるには、採用代行に全てを丸投げしないことが大切です。
採用方針や評価軸、採用基準などは必ず社内で明確に言語化し、採用代行会社と共有しましょう。
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10.まとめ
人的資本経営とは、人材を資本として捉えて投資し、企業の生産性や成長性を向上させる考え方です。
人的資本経営が主流になってきている主な背景としては、ESG投資の拡大や少子高齢化による労働力不足、多様な人材の採用促進が挙げられます。
人的資本経営を実現するためには、人材戦略と経営戦略を連動させた採用活動が重要で、戦略的に人材を採用・配置・評価・育成しなければなりません。
採用代行にノンコア業務を委託して、プロによるアドバイスをもらえば、業務効率と戦略性アップに役立ちます。
中でもネオキャリアは20年以上の経験と15,000社の支援実績による確かなノウハウが強みで、企業ごとの悩みにあわせた最適なプランを提案します。まずは気軽にご相談ください。
新卒から中途・アルバイトまで、累計500社以上の採用を支援
BPO事業部の課長として、新卒・中途・アルバイト領域の採用コンサルティングおよびアウトソーシングに10年以上携わり、累計500社以上の採用課題解決を支援。 業種・企業規模を問わず、大手から中小企業まで幅広い採用支援実績を有し、母集団形成から内定承諾率向上まで一貫した対応が可能。 社内外問わず、採用セミナーへの登壇も多数。培った採用ノウハウをもとに、企業の本質的な課題に合わせた最適なプランニングをおこなっている。
- 名前
大多和 圭/アウトソーシング関連
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