【企業向け】派遣会社に依頼する際の重要なポイントとは
人材派遣
一般社団法人日本人材派遣協会の調査によると、2020年1~3月平均の派遣社員数は約143万人おり、雇用者全体(5,661万人、役員除く)に占める派遣社員の割合は2.5%となっています。これは、ここ15年ほど大きな変化は見られず2~3%を推移しています。
また、同協会調査の2018年度の派遣売上高は、6兆3,816億円(前年比98.2%)と前年比割れをしているものの、いまだに一定の市場規模があります。
このことからわかるように、近年の人手不足から、派遣の活用は業種を問わず需要があります。
さらに、新型コロナウイルスの影響などで正規雇用が不安定な状況下では、ますますニーズが増える可能性があります。それに伴い、企業様から「派遣を活用したいが、依頼の方法がわからない」、「派遣社員の方がすぐ辞めてしまう」などお悩みの声も増えてきました。
そこで今回は、派遣会社の概要から派遣会社に依頼するメリット・デメリット、派遣会社に依頼する際に伝えるべき項目を徹底解説いたします。
<この記事で紹介する3つのポイント>
- 派遣会社に依頼する際に伝えるべき項目
- 派遣会社の選定
- 派遣社員を採用する際のポイント
1.人材派遣について
人材派遣とはどのようなものなのでしょうか。人材派遣についての概要、直雇用との違いや、紹介予定派遣について解説いたします。
1-1.人材派遣とは
人材派遣とは、求職者が人材派遣会社と雇用契約を締結し、派遣先企業にて就業する形態のことをいいます。
派遣先企業では業務に関する指示や命令を受けますが、給与の支払いや社会保険への加入、福利厚生の提供などのサポートは人材派遣会社がおこないます。
また、人材派遣は有期雇用です。2015年に改正された労働者派遣法では、派遣社員が同一の派遣先で働く上限が3年となっており、期間を定めているのが特徴です。
ただし、60歳以上の高齢者の方や定められた条件に当てはまれば、一部の派遣社員の派遣期間は対象外です。
1-2.直雇用との違い
直雇用とは、働く企業と直接、雇用契約を結んで就業する形態のことをいいます。正社員、契約社員、アルバイト、パートなどさまざまな雇用形態があります。
主に、「正社員」であれば労働契約に期間の定めがなくフルタイムでの勤務となる場合がほとんどです。契約社員は期間が定められており、契約を更新する形の就業形態となります。
派遣会社を介して派遣社員を雇用する「間接雇用」と区別して、「直接雇用」という呼び方もされています。
1-3.紹介予定派遣
紹介予定派遣は、正社員・契約社員といった直接雇用を前提に、一定期間派遣として働く雇用形態のことをいいます。
派遣期間は一般に3ヶ月~6ヵ月で、その後、派遣社員と派遣先企業双方の合意のもと直接雇用へと変更します。
また、紹介予定派遣や派遣会社からの紹介で派遣労働者を直接雇用した場合、派遣先企業は派遣会社に紹介手数料を支払う必要があります。
ただし、あくまで派遣社員と派遣先企業双方の合意によるため、拒むことも可能です。
紹介予定派遣と派遣との大きな違いは、派遣期間後に正社員や契約社員として働くことを前提としているかです。それにより、事前面談、派遣期間、手続きの3点が主に異なります。
事前面談
通常の派遣は事前の面談が禁止されています。(顔合わせや職場見学はおこなうことも可能)
しかし、紹介予定派遣では、派遣前の面談が可能になります。
派遣期間
通常の派遣では続けて業務をする場合には、派遣期間は最大で3年以内と定められています。
しかし、紹介予定派遣は直接雇用における試用期間であるという考えとなっています。そのため、派遣期間は最長で6ヶ月です。
手続き
通常の派遣では派遣期間中に就業先の企業と雇用契約を結ぶことはできません。
しかし、紹介予定派遣は派遣期間内でも、派遣先と派遣社員の両者の合意があれば直接雇用することができます。
その場合、企業側は派遣会社に紹介手数料を支払う必要があります。
2.人材派遣を依頼するメリット・デメリット
この章では、もう一歩踏み込んで、派遣を依頼するメリット・デメリットについて詳しくご紹介いたします。
2-1.人材派遣を依頼するメリット
有期雇用ができる(短期的な業務への対応が可能)
派遣は有期雇用が可能となっているため、短期的に人手不足を補いたいという企業様にはおすすめです。
また直雇用と異なり、契約の期間が限られているため、業務の効率性やコスト削減にもつながります。
コストの削減
各種保険関連(社会保険、雇用保険、健康保険)や労務(給与計算)については派遣会社が責任を負うことになっているため、派遣先企業はこれらの業務や義務を追う必要がありません。
そのため、1人の正社員を雇うよりも人員が足りない業務に随時派遣させる方が、業務コストや必要経費の削減につながります。
2-2.人材派遣を依頼するデメリット
育成期間がある
派遣社員を雇うデメリットとして、派遣社員が会社に慣れるまでの指導や研修などの育成期間があることが挙げられます。
派遣できる期限は上限3年と決められているかつ、通常の派遣契約は3ヶ月~1年ほどと短期的な期間となっています。そのため、定期的に派遣社員の入れ替わりが発生することとなります。
新しい派遣社員を迎えるたびに、自社の商品知識や基本的な作業方法を教える育成期間が必要であることを認識しておきましょう。
帰属意識の希薄さ
派遣期間が決まっている派遣社員は会社への帰属意識が薄い人もいます。
勤務期間が短いため、会社に対しての想いが入りづらかったり、正社員と仕事へのモチベーションに違いが出てくる場合もあります。
3.派遣会社に依頼する際に伝えるべき項目
では、実際に派遣会社に依頼する際、伝えるべき項目にはどのようなものがあるのでしょうか。依頼する際の項目の主なもの5つを解説します。
3-1.募集背景
募集背景を明確にすることで、
企業の今後の展望
補充のための人材なのか
増員のためなのか
などを知ることができます。
例えば、産休期間中の補充であれば、契約期間は1年くらいなどの目安にもなるため、どのような派遣スタッフが適しているのかという判断基準にもなり、派遣会社も依頼する企業にとってもメリットにつながります。
3-2.業務内容と人員構成
派遣を依頼する部署の役割や業務内容などはなるべく、細かく伝えましょう。
例えば事務職でも、会社によっては一般事務や営業事務を指している場合や総務・庶務なども含んでいるなど、違いが多くあります。詳細に伝えることで、似たような業務をおこなっていた派遣スタッフの紹介を受けやすくなります。
また、人員構成も大切です。派遣スタッフの中には、「少ない人数で業務がしたい」という方や「たくさんの人と関り合いながら業務をしたい」方など希望されている働き方もさまざまです。
具体的で詳細な業務内容や人員構成を伝えることで、より業務にマッチした人材を派遣してもらうことができるでしょう。
3-3.就業条件
就業時間や残業の有無、就業する曜日などの就業条件は、派遣会社の担当者が人選をおこなう上で重要になります。
スキルがマッチする人材であっても、就業条件が合わなければ企業側は紹介を受けられないため、派遣会社に依頼する前には派遣社員に働いて欲しい時間や曜日について社内で固めておくことが大切です。
3-4.資格やスキルの有無
業務を遂行するにあたって必須な資格やOAスキル、語学力などの条件についてもしっかり伝えましょう。
この際に大切なことは、資格やスキルの有無を求めすぎないことです。求めすぎてしまうと、全部に当てはまる派遣スタッフの登録がなかったりするなど、なかなか紹介されにくくなってしまいます。
そのため社内で、必須条件は何かを話し合い、これだけは必ず欲しいという要件を整理しましょう。
3-5.職場環境
職場を選ぶ際、ほとんどの人が職場環境を重視しています。例えば、男女比や服装の規定などを注目する派遣スタッフもいます。
特に、気をつけなければならない規定や規則がある場合は、詳細に伝えましょう。
また職場の雰囲気や人間関係は仕事をする上で重要になるため、働きたいと思わせるような工夫が必要です。
雰囲気を伝えるために普段の仕事風景や、メンバーの紹介などを資料にまとめて用意することも、派遣会社に紹介したいと思ってもらえる要素の1つかもしれません。
3-6.福利厚生
制服の貸与があるのか、食堂が社員割引で利用できるのか、医務室があるのかなどは必ず伝えましょう。
ドリンクサーバーの設置がある、パウダールームがあるなど、社内では当たり前な福利厚生でも、それに惹かれる派遣スタッフはいるかもしれません。
業務の上でも、モチベーション向上につながるかもしれないため、福利厚生と呼べるものはすべて派遣会社に伝えましょう。
4.派遣社員を募集する流れ
次に、派遣社員を募集する際の流れを見ていきましょう。
4-1.派遣社員の就業条件を決める
まずは、派遣社員の就業条件を決めます。契約の期間や業務内容、賃金などをしっかり決める必要があります。
その際に、条件面だけではなく、どのような人が向いているのかなどソフト面も決めておくと、ミスマッチの防止にもなります。
4-2.派遣会社の選定
派遣社員の派遣を希望する場合には、まずは派遣会社の選定も重要です。派遣会社は数多くあるため、
これまでの実績や拠点
対応職種
専門分野の有無など
をもとに自社に合った会社を選びましょう。
4-3.派遣会社に依頼
派遣会社を選定した後、実際に派遣会社に依頼することになります。
3章をご参考いただき、営業担当にどんな人材が必要なのか、募集の背景や就業条件、業務内容、職場環境などを詳しく伝えましょう。
4-4.マッチング
依頼内容をもとに、人材派遣会社の担当者がスキルや就業時間などの条件に合った派遣スタッフを選定し、紹介をおこないます。ただし、派遣スタッフを履歴書や面接で選考することは、労働者派遣法によって禁止されています。
そのため、派遣会社の営業担当者とともに派遣社員が来社し、職場の見学やスキルの確認などをおこなう顔合わせが実施されることが多くなっています。
4-5.派遣契約後、受け入れ開始
就業する派遣スタッフが決定した後、派遣会社と契約をおこないます。派遣社員の受け入れにあたって、就業期間や担当業務を社内で周知しておくと社員がスムーズに対応できます。
入退出時の管理システムや社内のPCの設定、業務マニュアルや備品の準備も事前に進めておきましょう。また、一緒に働く現場の社員にも伝えておくこともおすすめします。
5.派遣社員を採用する際のポイント
ここでは派遣社員を採用する際の3つのポイントをご紹介します。ポイントを押さえて、今後の採用に活かしていきましょう。
5-1.正社員と平等に扱う
正社員と派遣社員を差別してしまい問題になるケースもあります。
例えば
- 会社の備品が正社員から優先される
- 社内の情報を共有してもらえない場合がある
- 社員食堂や休憩スペースを使わせてもらえない
といった差別とみてとれる事象もあるようです。
同じ会社で働いている仲間として、基本的に正社員と派遣社員は平等に扱いましょう。会社の制度上やむを得ない場合の区別は必要ですが、理由のない差別は訴えられてしまうこともあるので注意が必要です。
また、2020年4月1日に「同一労働同一賃金」が施行されたことにより、正社員と派遣社員の待遇格差を無くす取り組みも始まっています。
- 「同一労働同一賃金」の具体的な内容が分からないという方は必見!
2020年4月より、働き方改革の一環として「同一労働同一賃金制度」が全国で一斉に施行されました。
- 「同一労働同一賃金」とはどのような制度なのか
- 企業が施行前に対応すべきことは何か
を徹底解説いたします。ぜひ、ご参考にしてみてください。
5-2.社内ルールの勉強会や業務研修を設ける
派遣社員は契約期間の決まりはあるものの、会社のために働いてくれる貴重な人材として変わりありません。
業務や職場環境に早く慣れてもらうように、社内ルールの勉強会や業務研修の機会を作ることが重要です。
派遣社員のためだけではなく、スキルアップや社内制度に慣れることで業務の効率化や新たな仕事を任せられるなど、会社へのメリットにもつながります。
5-3.依頼する業務内容を明確にしておく
派遣社員を受け入れる際、その業務に関わるすべての社員に派遣社員に依頼する業務内容を共有しておきましょう。
スムーズに業務を進めるには、業務内容・方針の足並みをそろえ、誰がどの範囲の業務をおこない、どこから派遣スタッフに任せるのか明確にすることが重要です。
6.ネオキャリアグループの人材派遣サービスをご紹介
6章では、主な派遣会社を5つご紹介いたします。
6-1.一般事務・コールセンター派遣サービス
6-2.介護職員派遣サービス ナイス介護
6-3.保育士・幼稚園教諭派遣サービス 保育ひろば派遣
6-4.建設人材派遣サービス ネオコンストラクション
6-5.ITエンジニア派遣サービス AXAS株式会社
まとめ
派遣の最大の魅力は、必要な時に特定のスキルを持った人材を雇用できることです。
募集から採用するまでに大幅な時間と手間がかかる直雇用と比べてみても、派遣会社に依頼することで解決できる点はたくさんあります。
人手不足が加速している中、派遣を利用して効率よく生産性をあげていくことが、今後重要になってくるのではないでしょうか。
人手不足でお悩みの企業は、派遣会社への依頼を検討してみましょう。