【企業様向け】「派遣」と「業務委託」の違いとは?契約時のメリット・注意点を徹底解説!
人材派遣
「業務委託」と「派遣」は一見似ている業務形態ですが、実際には全く違うものであり、違いを正しく理解しておかないと、実際に働く際に問題になる可能性があります。
<この記事で紹介する3つのポイント>
- 派遣のしくみとメリットデメリット
- 業務委託のしくみとメリットデメリット
- 業務委託を利用する際の注意事項
目次
1.派遣とは
派遣とは、正社員、契約社員、パート、アルバイトのような働き方の選択肢のひとつです。
正社員やアルバイトは、雇用契約を結ぶ先と実際に働く場所が同じですが、派遣は、派遣先企業で仕事をする就業形態です。
1-1.派遣の仕組み
上記でも述べたように、派遣は、派遣先企業で仕事をする就業形態となっています。
そのため給与は派遣会社から受けとり、福利厚生も派遣会社のものが適用されますが、実際の仕事の指示は派遣先企業の担当者から伝えられます。
派遣スタッフは、仕事を紹介され派遣先が決まると派遣会社と雇用関係が成立します。登録だけでは雇用関係は成立しません。
また、 派遣期間の終了とともに、雇用契約も終了します。雇用契約終了後も、派遣会社に登録していれば次のお仕事を引き続き探したり、紹介を受けたりすることが可能です。
1-2.派遣のメリット
コスト削減
厚生労働省によると、派遣社員について派遣社員を受け入れる側の企業(以下派遣先企業または派遣先)が持つ責任の例は、以下になります。
労働時間管理、危険防止措置(機械や爆発物などによる危険の防止)、健康障害防止措置(原材料、ガスなどによる健康障害、高温、低温等による健康障害などの防止)etc.
(厚労省「派遣先の皆様へ」H22.2版)
社会保険や雇用保険などの保険関連や、給与計算といった労務まわりについては派遣会社が責任を負うことになっているため、派遣先企業はこれらの業務をおこなう必要がありません。
そのため、1人の正社員を雇うよりも雇い入れ前後の業務コストを削減することができます。
業務の効率化
派遣を最大限に活用する方法として、決算や年末調整などの定型業務や高度なスキルが求められる業務の人手不足を補うことがあげられます。
決算や年末処理は毎年おこなう業務ですが、他の業務もこなしながら突破的な業務の対応などもおこなっていると、ミスをしてしまったり、残業が多くなってしまったりということが起こりやすいでしょう。
そこで、定型業務をおこなう時期に合わせて派遣労働者を雇い入れることで、正社員は他の業務や突発的な対応に専念できるだけでなく、ミスや残業の削減にもつながります。
また、WEBサイトの作成や運用、販促物のデザインなど専門的なスキルを必要とする業務を、専門スキルを持った人材を必要なときに雇い入れることで、正社員だけではできない幅の業務をおこなうこともできます。
さらに、実際の働きぶりを見て、優秀な社員を双方の同意のもと正社員として雇い入れることもできるため、一時的ではなく、継続的な業務の効率化などができます。
1-3.派遣のデメリット
育成費用がかかる
派遣社員を活用することでメリットが生じる一方で、派遣社員が会社に慣れるまでの指導や説明、育成にかかるコストが発生します。
たとえば、数年かけて指導してきた派遣社員であっても、受入期間終了後に全員がそのまま正社員になるわけではありません。
新たな派遣社員を受け入れるたびに、教育や育成をおこなうためのコストが発生することを認識しておきましょう。
ただし、企業によって正社員の平均勤続年数が3~5年も珍しくない近年では、派遣社員だからこそ生じうるコスト、とは一概には言えないかもしれません。
帰属意識の希薄さ
派遣期間が決まっている派遣社員の中には、会社への帰属意識が薄い人もいるかもしれません。
何年も同じ企業で働いている従業員と比べると、勤務期間が短く、かつ勤務期間が決まっている企業で働くとなると、思いが入りづらい可能性もあります。
また、帰属意識の薄い派遣社員による就業後の情報漏えいを心配する企業もあります。
情報漏えいを防ぐために、派遣社員受入れにあたって制度やルールを設けて対策を取るのも重要です。ですが、派遣社員の中にも正社員と変わらずやりがいを持って働いている方々もいます。
そのため、「派遣社員=帰属意識が低い」とみなして機会損失を招くことは、本人にとっても企業側にとっても不利益になってしまうことあるため、注意が必要です。
2.業務委託とは
業務委託とは、自社で対応できない業務を、他の企業や個人といった外部に委託する契約です。
仕事を任せる側と引き受ける側は雇用関係を結ばず、対等な立場で依頼を受けます。
2-1.業務委託のしくみ
参照:業務委託とは?他の契約との違いから契約書作成までのポイントを網羅
業務委託の契約形態には、主に業務の内容により「請負契約」と「委任/準委任契約」の2つの契約形態が存在します。
それぞれ、どのような点が違うのでしょうか。
請負契約
請負契約は「成果物」に対して報酬を支払う契約になります。成果物とは、
「新商品のブランドロゴマークのデザイン」
「通販ページの受発注システム」
「コンテンツマーケティングの記事」
などがあります。
加えて、個人が自宅の建築を工務店に依頼した場合も請負契約を交わします。この場合の成果物は「新築の一戸建て」になります。
たとえばWebライティングのライター募集の企業が、応募したライターと雇用関係を結ばずに記事の執筆を発注する場合も、請負契約という形で業務委託します。
WordやGoogleドキュメント、テキストやWordPressなどで納品した記事が「成果物」になるわけです。その成果物に対して報酬を支払う契約が請負契約です。
業務を請け負うことになったら、決められた期限までに成果物を完成させなければなりません。
万が一決められた期限内に業務が終わらない場合は、報酬が発生しないうえに、契約違反による賠償金が請求されることもあります。
委任/準委任契約
委任/準委任契約とは、「特定の行為の遂行」に対し、報酬を支払うことをいいます。「委任」と「準委任」の2つに分けているのは、法律を扱うかどうかの違いによるものです。
弁護士や税理士に法律行為を行う業務を委託する場合は「委任契約」、法律行為以外の業務を委託する場合が「準委任契約」となります。
いずれの場合も、成果物の有無は関係なく、特定の行為の遂行(=業務を行った事実)に対して報酬が支払われます。
特定の行為の遂行とは、
「ゲーム開発会社の音楽制作プロジェクトに、個人で活動する音楽家に参加を依頼」
「企業のWebサイトの保守管理」
「ゴルフスクールのインストラクター」
「裁判で依頼する弁護士」
「患者の治療を行う医師」
などです。
上記の場合、弁護士は裁判で法律行為を行うため委任契約となりますが、他はすべて準委任契約になります。
2-2.業務委託のメリット
社内人材の有効活用
業務委託に限らず、すべての形態でのアウトソーシングによってもたらされる効果として、企業の自社社員の有効活用が挙げられます。労働人口減少が深刻化する一方で、市場のグローバル化・多様化・複雑化が進んでいます。
それによりビジネスが拡大し、社内の業務量も増加傾向です。そのため、限られた社内の人材を基幹事業となる業務、コア業務に専念させ、企業全体の生産性を高めていくことが、企業の存続において必要不可欠なプロセスと言えるのです。
ノンコア業務や、長年のノウハウや経験が必要とされる専門的な業務を、その道のプロに委託することで、社内人材をより業務へ集中させることができます。
教育コストの大幅削減と品質の維持・向上
外部のプロに委託する対象となる業務は、大きく2パターンに分かれています。上記に述べたとおり、人事や経理といった間接部門に代表されるノンコア業務と、IT関連部門などの専門技術や知識が必要とされる業務です。
間接部門においても、経験を積むにつれて身についていく様々なスキルや知識が必要とされますが、社内人材を育成するには時間と労力がかかります。
経理なら、税制に精通しており改正に即時対応できるスキル、ITならシステム開発や運用・保守などのスキル、というような、一から社内で育成するには時間と労力がかかるケースが多くあります。
そこで、外部の高い技術力や専門知識・ノウハウを持った人材へ業務を委託することで、社内での育成コストを抑えながらも、品質の維持、またはさらなる向上を実現することができます。
2-3.業務委託のデメリット
ノウハウや技術が蓄積されない
業務委託の受託者は自社の従業員ではないため、受託者の技術が向上していったり、ノウハウを得たりしていても、自社には蓄積されていかないことがデメリットです。
そこで、定期的にミーティングやレポートの提出を求める契約内容にしておくことと、業務の遂行状況が把握できるようになり、ある程度のノウハウは得ることができます。
報酬が高額になるケースもある
業務委託は必ずしもコスト削減につながるとは限らず、特に専門性の高い業務の場合、報酬が高額となり、従業員として雇うよりもコストがかかるケースもあります。
また、イレギュラーな業務が発生してしまうケースでは、追加料金の支払いによって報酬が割高になるケースもみられます。
業務委託をする前に、業務委託に向いている業務か検討したり、自社の従業員で担う場合とのコストの比較をしてみることが大切です。
3.派遣と業務委託の違い
上記でも述べたように、業務形態は同じような場合があります。
では一体どういったところが違うのでしょうか。表にしてみてみましょう。
業務委託 | 派遣社員 | |
採用側が結ぶ契約 | 業務委託契約 | 労働者派遣契約 |
契約期間 | 契約期間が終了するまで | 同一業務に3年間従事させる場合は、 直接雇用契約が必要 |
業務の指揮命令 | 不可 | 可 |
労働法の適用 | なし | あり |
社会保険の加入 | 不要 | 不要 |
年末調整 | 不要 | 不要 |
対価として支払うもの | 報酬 | 派遣料金 |
4.業務委託を利用する際の注意事項
業務委託で要求者の事業所に請負人たる会社の労働者が常駐するケースでは、しばしば偽装請負が疑われ、問題視されることがあります。
偽装請負とみなされるケースと注意点についてまとめました。
4-1.要求者が直接指揮命令をしていないか
業務委託契約では、注文者は請負人の労働者に対して、業務の遂行方法や労働時間等に関して具体的な指示を出すなど、直接指示命令をおこなうことはできません。
業務を遂行するための段取りや実施スピードの決定は、請負人に任せられます。
4-2.要求者が始業や終業の時間を指定していないか
要求者が請負人たる会社の労働者に対して、始業時間や終業時間、休憩時間、休日を決めたり、残業や休日を指定したり、労働時間の管理を行ったりする行為も偽装請負とみなされます。ただし、始業や終業の時刻や休日を単に把握することは問題のない行為です。
また、始業時間や終業時間に対して要望がある場合は、請負人たる会社の責任者に話し合いを申し入れたうえ、請負人たる会社の指示系統の中で指示が行われる分には問題はありません。
ただ、その場合であっても、請負人たる会社が注文者の言いなりであるような場合は、実質的にみて注文者からの指示命令による指定がなされたと判断される余地があると思います。
4-3.注文者が従事する労働者を選定していないか
請負契約では、注文者が請負人たる会社の労働者の中から、自社の委託する業務に従事する人材を選定したり、業務を遂行するのに必要な人員の数を指定したりすることはできません。
また、請負人たる会社の労働者に対して評価を行うことも、偽装請負とみなされる行為です。従事する労働者の数や担当する人材の選定は、請負人たる会社側に委ねましょう。
4-4.注文者が服務上の規律を規定していないか
請負契約を結ぶ請負人たる会社の労働者は、要求者の指揮命令下にはなく、注文者が自社の社員規則などの服務規定を守るように、直接的に通達を行うことや遵守するように管理をすることはできません。
一方で、請負人たる会社が自社の労働者に対して、注文者の服務規定などのルールを通達したり、管理を行ったりすることは問題のない行為です。
参照:【弁護士監修】業務委託と派遣の違いは?偽装請負を避ける注意点も!
5.まとめ
「必要な時に」「必要なスキルを持った人材を」「少ないコストで」雇用できることが派遣・業務委託の最大の魅力です。
直接雇用となると、求人広告などで人を集めることからはじまり、社内の人達の予定を合わせて説明会を開き、面接をし、入社書類処理をして…とさまざまな業務が必要になります。
ただでさえ人手が必要な時に、これらの作業を普段の仕事と並行してすることは、企業にとって大きな負担となります。
人手不足の際に、派遣・業務委託を利用すれば、すぐに必要な人材を確保できます。
しかし、冒頭でも述べたとおり「派遣契約」と「業務委託」は混同されることもありますが、似て非なるものです。
違法行為となる偽装請負とみなされることのないように、契約内容に留意するとともに、直接指揮命令を行わないように、実際の運用でも注意することが大切です。