ITエンジニアの転職理由から分析した2026年の採用方法予測
エンジニア転職理由

ITエンジニアの転職理由は、一般的な「給与」「勤務条件」だけではありません。
本調査で明らかになったのは、エンジニアが「複数の理由を組み合わせて」転職を決断し、その過程で「情報収集」、「比較検討」、「確認」を何度も繰り返しているという実態です。
本記事では、アンケート結果を分析し、採用担当者が応募から内定、そして入社までの各フェーズで取るべき具体的な採用施策を解説します。
1.ITエンジニアの転職理由の実態分析

出典:株式会社ネオキャリア調査資料
ITエンジニアの転職理由は「給与」ではなく、複数理由の組み合わせで転職を決断しています。
転職理由のトップ3から見える本当のニーズ
Q1「転職をしようと思ったきっかけ」のアンケート結果によると、ITエンジニアの主な転職理由は3つです。
- 給与が低かった:43.6%
- 長時間勤務や休日出勤が多かった:42.7%
- 業務内容にやりがいを感じなかった:41.8%
■重要なポイント
これら3つはいずれも「40%超」で、ほぼ同等の影響力を持っています。
つまり、エンジニアが転職を決める際は、「給与だけ改善しても解決しない」ということです。
採用担当者が今すぐすべきこと
・給与のみでなく、「ワークライフバランス」「やりがい」の3要素を同時にアピール
・求人票に「平均残業時間」「リモートワーク制度」「プロジェクト事例」を記載
・スカウト配信時に「この企業のこの仕事なら、やりがいを感じながら働ける」というメッセージを追加
今後の予測
2026年以降、単純な「給与上昇」だけでの採用は通用しなくなります。
データが示す通り、給与・勤務体系・やりがいの3つが同等の重要性を持つため、企業は「全方位的な改善」を迫られるでしょう。
特に、業務内容の魅力化(新規事業、最新技術の導入など)に投資できない企業は、採用に時間がかかる可能性が高まります。
複合的な不満の構造を理解する
転職理由の複数回答結果から、以下の3つのパターンが見えてきます。
- 「ワークライフバランス + やりがい」の不一致
- 「成長性の喪失 + 不透明な将来」
- 「評価制度への不信感 + 努力の無駄感」
パターン①「ワークライフバランス + やりがい」の不一致
- 長時間勤務(42.7%)+ 業務内容にやりがいがない(41.8%)
- 忙しいのに、やりがいまで感じられない=最悪の組み合わせ
■重要なポイント
「給与を上げます」だけでは引き留めできない層が、最もエンジニアリソースが豊富な層です。
給与以外の課題を見直します。
パターン②「成長性の喪失 + 不透明な将来」
- 会社で学べるスキルに限界(23.6%)+ 成長できるイメージが持てない(20.9%)
- 会社の将来性や事業方向に不安(32.7%)
■重要なポイント
「3年後、5年後に自分は何ができるようになっているか」が見えないと離職率が高まりやすくなります。
パターン③「評価制度への不信感 + 努力の無駄感」
- 評価制度に納得できない(20.0%)+ 給与が低い(43.6%)
■重要なポイント
「頑張っても評価されない=給与が上がらない」という負のループが生じやすくなります。
採用担当者が今すぐすべきこと
- パターン①対策: 求人情報に「平均残業時間」「年間休暇日数」「リモートワーク率」を数値化して記載、「面白いプロジェクト」の具体例も追加しておく
- パターン②対策:「スキル習得制度」「研修予算」「昇進スピード」を明記して、社員のキャリアパス事例を3~5件紹介する
- パターン③対策:「評価基準」「給与決定プロセス」「昇給実績」をドキュメント化し、面接で詳細説明する
今後の予測
2026年以降、エンジニアの転職理由は「単一要因」ではなく「複合的な不満」が増加しています。
特に成長性への不安(パターン②)は、AI技術の急速な進化に伴い、「企業は新技術に対応できるのか」という懸念が強まると予測されます。
対応できない企業からのエンジニアの流出は加速し、採用難易度は一段と高まるでしょう。
複合的な理由が採用方法を決める
「給与」や「勤務条件」のアピールだけではなく、「複合的な訴求」を採用プロセスの各段階でおこなうことにより、エンジニアの採用をおこないやすくなります。
採用担当者が今すぐすべきこと
- 採用コンセプトを「給与」から「複合価値」へ転換する。
Before(従来型)「給与:年収〇〇万円」
After(推奨):「給与:年収〇〇万円+リモート可能+最新技術習得+透明な評価基準」
- 複数媒体(転職サイト・スカウト・SNS)で、異なる訴求を段階的に展開
今後の予測
2027年までに、「複合価値の訴求ができない企業」と「できる企業」の採用成功率は3倍以上の差が生じると予測されます。
採用担当者の情報提供能力が、企業の採用競争力を大きく左右する時代へ移行するでしょう。
2.「情報収集」段階で企業は既にフィルタリングされている

出典:株式会社ネオキャリア調査資料
情報収集のために転職サイトを活用した求職者は65.5%にのぼります。
しかし、転職サイトだけでは、応募や入社につながりにくい状況です。
転職サイトが圧倒的多数(65.5%)だが、決め手は別
アンケートのQ2「情報収集に活用したツール」では、転職サイトが65.5%と突出しています。
しかし、Q3「転職の決め手となったツール」の回答では、転職サイトは33.2%に低下します。

出典:株式会社ネオキャリア調査資料
分析
転職サイトは情報収集目的で広く使われていますが、転職の決定には至っていません。
つまり、転職サイトは「候補を絞るためのツール」に過ぎず、「決定を促すツール」ではありません。
採用担当者が今すぐすべきこと
- 転職サイトの求人情報を「基本情報」と位置づけ、求人票の充実度を高める
例:業務内容:200字以上の詳細説明
給与・勤務体系:実績ベースの具体例 - 企業文化項目の充実:社員の声などの掲載や、インタビュー動画へのリンクを掲載
- 転職サイト内の「企業ページ」をブランディング媒体として活用
今後の予測
2026年以降、転職サイトの「情報充実度」が採用成功の第一関門です。
現在、転職サイトの求人票は「平均文字数200~300字」のテンプレート形式ですが、エンジニアは「詳細で具体的な情報」を求めるようになります。
転職サイト上での「詳細情報提供」ができない企業は、情報収集の段階で既に候補から外される可能性が高まります。
スカウトサービスが「情報収集」から「決定」へ直結
- 情報収集:スカウトサービス 39.1%
- 決め手:スカウトサービス 14.7%
Q3「転職の決め手となったツール」の回答データを比較すると、情報収集から転職の決めてとなったと回答した割合が低下しているように見えます。
しかし、比率で見ると「約38%の人が、スカウトで情報収集を開始し、その中の約40%が最終決定に至った」ということです。
つまり、スカウトサービスは「質の高いマッチング」が実現している採用手法のひとつです。
採用担当者が今すぐすべきこと
- スカウト配信の精度を高める
ターゲット:スキルや経験年数、技術スタックを細分化
メッセージ:「給与:〇〇万円」ではなく、「このプロジェクトで使用する〇〇技術で、年〇〇万円」という具体性 - スカウト受信後のレスポンス速度を2日以内に設定
- スカウト配信後、1週間以内にフォローメールを送信
■重要なポイント:数値目標の設定
- スカウト開封率:現在30~40%→目標50%以上
- スカウト返信率:現在10~15%→目標25%以上
- スカウトから面接到達率:現在30~40%→目標60%以上
今後の予測
スカウトサービスの「質の高さ(確度の高さ)」がデータで証明されたため、2026年以降はスカウトサービスの利用企業と、そうでない企業の「採用成功率に2倍以上の差」が生じると予測されます。
特にエンジニア採用では、スカウト活動を導入しないままでは、採用枠を埋めることが困難になる可能性があります。
転職者の情報収集の実態:複数ツールの組み合わせ

出典:株式会社ネオキャリア調査資料
Q4の「転職サイトや人材紹介サービスに登録した理由」についてのアンケートでは、「自分の転職市場価値を知りたかったから」が63.2%という圧倒的な回答率を占めています。
分析
エンジニアは、「自分が市場でどの程度の価値があるのか」を複数ツールで検証しています。
具体的には、以下の3段階を経て、応募企業を決定してる状況です。
- 転職サイトで「一般的な求人相場」を知る
- スカウトサービスで「自分への評価」を知る
- 転職者向け情報サイトで「業界全体の動向」を知る
採用担当者が今すぐすべきこと
- 転職サイト:「この企業で得られる給与」を市場相場と比較しやすくする
- スカウトサービス:「あなたの市場価値を考慮した給与」を明示
- 転職者向け情報サイト(企業ブログ、SNS):「業界での当社の立場」「競争優位性」を発信
| ツール | 求職者にとっての役割 | 企業の施策 |
| 転職サイト | ・一般的な求人相場 ・情報の確認 | ・求人情報の充実 ・競争優位性の明確化 |
| スカウトサービス | ・「自分への直接的な評価」を確認 | ・パーソナライズされたスカウト ・企業文化や技術の発信 |
| 転職者向け情報サイト | ・業界全体の動向や信頼性の確認 | ・企業ブログやSNS開設 ・社員インタビュー、技術記事の発信 |
今後の予測
2026年以降、エンジニアの転職活動は「3つ以上のツール併用」が標準化していく傾向が高まっています。
企業は「複数ツールでの露出」を前提とした採用戦略を立案する必要があり、単一の転職媒体への掲載だけでの成功は困難になるでしょう。
3.応募と面接の乖離が示すもの:企業側の説明不足が最大の離脱理由

出典:株式会社ネオキャリア調査資料
Q5「転職活動中に応募した会社の数」のアンケート結果は、4社~6社が最多の41.8%です。
しかし、応募した数に対して、面接に進んだ企業の数が減少します。
データから見える「流出」

出典:株式会社ネオキャリア調査資料
Q6「転職活動中に面接した会社の数」と、Q5「転職活動中に応募した会社の数」を比較すると、応募から面接までに離脱が多いことがわかります。
- 応募した会社の数:4社~6社が41.8%(最多)
- 面接まで進んだ会社の数:1社~3社が41.9%(最多)
分析
平均すると、エンジニアは「応募した会社の約50%には面接に進まない」状況です。
つまり、「応募後の段階で、既に半数以上が脱落」しています。
採用担当者が今すぐすべきこと
- 応募後48時間以内に初期ヒアリングメールを送付
- メール内容:業務内容やチーム構成、技術スタック、評価基準を記載
- 面接日程の提案は、応募から1週間以内に実施
■重要なポイント:数値目標の設定
- 応募から面接到達率:現在50%→目標70%以上
- 応募から内定までの期間:現在2~3週間→目標1~2週間
今後の予測
2026年以降、応募後の脱落率が採用成功の「最大のボトルネック」になります。
データが示す通り、約50%の応募者が面接に進まないという現実は、採用側の「説明不足」を示しています。
対応できない企業は採用機会を50%失い続けることになります。
なぜ求職者が応募後に脱落するのか:企業の説明不足

出典:株式会社ネオキャリア調査資料
以下の3点は、Q8「内定を辞退した、もしくは応募を見送った会社の特徴」の上位回答です。
- 会社や業務、教育や評価基準などの説明が不十分だった:28.2%
- 求められるスキルが合わなかった:27.3%
- 募集内容と実際の雇用条件が違った:25.5%
分析
脱落理由の第1位は「説明不足」です。
つまり、多くの企業は「求人票に書いた情報」だけで、求職者が本当に知りたい情報を提示できていません。
採用担当者が今すぐすべきこと
- 応募後ヒアリングメール作成:テンプレート化
業務内容の詳細:プロジェクト例、技術スタック、チーム規模
評価基準と給与決定プロセス
教育制度:研修予算、スキル習得機会 - チェックリストの作成:「求人票に書いてあるが、説明されていない項目」を特定
■重要なポイント:数値目標の設定
- 説明不足による脱落率:現在28.2%→目標15%以下(1年以内)
今後の予測
2027年までに、「応募後の初期説明」が採用プロセスの最重要ポイントになります。
データが示す通り、脱落理由の第1位が「説明不足」である限り、ここに対応しない企業の採用成功率は低迷し続けるでしょう。
採用担当者が今すぐできる施策①:応募から面接までの「説明段階」を設ける
応募から面接日程調整までの流れを整理することにより、「説明不足による脱落」を大幅に減らすことができます。
■従来のフロー
・応募→自動メール→面接日程調整→面接
■推奨パターン
・応募→初期ヒアリングメール(業務内容、チーム構成、技術スタック、評価基準を記載)→ 面接日程調整→面接
採用担当者が今すぐすべきこと
- 初期ヒアリングメールのテンプレート作成(30分程度)
件名:「〇〇職についてのご質問にお答えします」
本文:業務内容(300字以上)、チーム構成、給与例、福利厚生
CTA:「ご不明な点があれば、いつでもお気軽にお問い合わせください」
■重要なポイント:数値目標の設定
- 実装にかける時間
初期設定:2~3時間
運用:応募1件あたり3~5分
- 脱落率削減:28.2%→15~20%
- 面接到達率向上:50%→70~75%
今後の予測
上記のワンステップを導入した企業と導入しない企業の採用成功率は、3倍以上の差が生じると予測されます。
採用担当者が今すぐできる施策②:スカウトサービス + 直接説明の組み合わせ
応募を待つのではなく、スカウトで「この企業の具体的な情報」を先制配信する方が、面接到達率が上がります。
採用担当者が今すぐすべきこと
- スカウト文面の改善
Before:「〇〇職の募集をしています。給与:年〇〇万円。ご応募をお待ちしています」
After:「あなたの〇〇スキルが活躍できるプロジェクトがあります。このプロジェクトではこのような技術を使用しており、チーム規模は〇〇人です。給与:年〇〇万円」 - スカウト配信後の自動フォローメール設定
■期待される効果
- スカウト返信率向上:10~15%→25~35%
- スカウトから面接到達率:30~40%→60~70%
今後の予測
スカウトの「具体性」が重要度を増します。
漠然としたスカウトメールの内容では返信されず、「あなたはこのプロジェクトで必要な人材」という、具体性のあるスカウトが返信されやすくなります。
4.応募理由のトップ2は「給与/勤務体系」と「サービス内容」

出典:株式会社ネオキャリア調査資料
Q7の「応募した会社に興味を持った理由」の上位は以下の2点です。
- 給与や勤務体系、福利厚生がよかったから:51.8%
- 興味のあるサービスを扱っているから:50.9%
回答の上位2つはほぼ同数ですが、意味が全く違うという点が重要です。
- 給与/勤務体系は「ハイジーン要因」=満たされないと不満な項目
- サービス内容は「モチベーション要因」=満たされるとやる気や納得度が大きく向上する項目
つまり、採用情報では「給与や勤務体系」で最低限を満たしつつ、「サービス内容の面白さ」「開発環境」「成長機会」を強調すべきということです。
採用担当者が今すぐすべきこと
- 求人票の「サービス内容」セクションを強化
業務内容の「面白さ」を言語化(新規技術、大規模プロジェクト、ユーザー数など)
開発環境の詳細(使用言語、フレームワーク、インフラ)
チームの専門性(社員のスキル、外部での発表実績) - スカウト配信時に「給与」だけでなく「プロジェクト」を前面に出す
強調順序の推奨割合
- プロジェクト内容:50%
- 給与・勤務条件:30%
- 会社のビジョンやサービス:20%
今後の予測
2026年以降、エンジニアの応募理由は「給与」から「プロジェクト」へシフトします。
AI技術の進化に伴い、「どのような最新技術に触れられるか」が採用選定の重要要素になるでしょう。
給与だけでアピールする企業は、採用競争で後退します。
採用での訴求順序の重要性
Q7の「応募した会社に興味を持った理由」の3位と4位の回答も、エンジニア採用の成功に欠かせない項目です。
- スカウトや紹介をされたから:38.2%
- やってみたい開発やプロジェクトがあったから:35.5%
分析
- スカウトで応募させる企業は、その後「具体的な開発内容」を説明する必要がある
- 漠然とした求人ではなく、「このプロジェクトに参画できる」という具体性が応募理由の上位に来ている
- スカウトサービスで「あなたのスキルを活かすプロジェクトがあります」という具体的なメッセージが重要
採用担当者が今すぐすべきこと
- スカウト配信時の「プロジェクト情報」の具体化
プロジェクト名、規模、使用技術、期間
「このプロジェクトで、あなたの〇〇経験が活躍できます」というパーソナライズされた訴求 - スカウト配信後、「プロジェクト紹介動画」へのリンクを自動送付
■期待される効果
- スカウト返信率:+10~15%
- スカウトから面接到達率:+20~30%
今後の予測
スカウトとプロジェクト情報の「セット販売」が標準化します。
スカウトだけでは返信されず、「このプロジェクトに参画できる」という明確なビジョンを示す企業が成功します。
採用担当者が取るべき施策:スカウト+技術情報の発信戦略
スカウトサービスと掛け合わせた、技術情報の発信戦略のために活用できるツールと配信内容例です。
| ツール | 配信内容 |
| スカウトサービス | 「あなたのスキルが活躍できるプロジェクト」の具体名や内容 |
| 企業ブログ/技術記事 | 実際の開発風景、使用技術、チーム構成、やりがい |
| SNS(X/GitHub) | 技術トレンド、開発環境、社員の専門性 |
採用担当者が今すぐすべきこと
- 月1回の技術ブログ投稿(各500字以上)
プロジェクト事例、使用技術、開発プロセス - 月2~3回のSNS投稿
技術情報、社員インタビュー、イベント参加
■期待される効果
- スカウト配信時の「クリック率」「開封率」が20~30%向上
今後の予測
企業の「技術情報発信力」が採用成功の重要要素になります。
情報発信できない企業は、いくらスカウトを配信してもエンジニアの関心を引けず、採用機会を失う可能性が高まります。
5.内定辞退、応募見送りの理由は、全て「説明・透明性の欠如」

出典:株式会社ネオキャリア調査資料
Q8 「内定を辞退した、もしくは応募を見送った会社の特徴」の上位3点には、「企業側が事前に説明、明確化できたはずのもの」の不足という共通点があります。
- 会社や業務、教育や評価基準などの説明が不十分だった:28.2%
- 求められるスキルが合わなかった:27.3%
- 募集内容と実際の雇用条件が違った:25.5%
採用担当者が今すぐすべきこと
- 内定辞退の「本当の理由」を分析するフォローアップメール作成
- 辞退者への聞き取り調査(5分程度の電話ヒアリング)で、改善点を把握
今後の予測
業界を問わず、エンジニアの内定辞退率は、今後も上昇し続けるでしょう。
説明不足が最大の理由である限り、対応しない場合のの辞退率は20~30%に達する可能性があります。
「説明が不十分」は採用プロセスで改善可能
説明不足による内定辞退、応募見送りを改善するために理解を深めておくべき問題点が3つあります。
- 求人票では「一般的な業務内容」しか書けない
- 面接では「売り込み」に注力し、「詳細説明」が後回しになる
- 内定後に「実際の配属先」「具体的な業務」が明かされる
問題点を改善して採用フローを改善することにより、内定辞退や応募の見送りを改善できます。
採用担当者が今すぐすべきこと
- 各フェーズでの「説明チェックリスト」作成
一次面接:業務内容、チーム構成、技術スタック
二次面接:評価基準、給与決定プロセス、キャリアパス - 内定前:配属先メンバー紹介、初日のスケジュール
■期待される効果
- 内定辞退率低下:現在15~20%→目標5~10%
今後の予測
2027年までに、採用プロセスに「説明フェーズ」を組み込まない企業の内定辞退率は、30%を超えると予測されます。
採用担当者が取るべき施策:「説明フェーズ」の体系化
「説明不足による辞退」は大幅に削減するためには、応募段階から面接、内定までの説明フェーズの体系化が鍵となります。
推奨されるフローは以下の4段階です。
- 応募段階: 初期ヒアリング+詳細な業務内容説明メール
- 一次面接: 配属予定チームの説明、技術スタック、評価基準を明確化
- 二次面接: 実際の配属予定者(メンターになる人)が登場、リアルな話をする
- 内定前: 「配属先」「プロジェクト」「給与・福利厚生」「評価基準」をドキュメント化して共有
採用担当者が今すぐすべきこと
- 各フェーズでのメール・資料テンプレート作成(2~3日)
- 配属部門との事前打ち合わせ(役割や説明内容の確認)
■期待される効果
- 内定辞退率:20%→10%以下
- 入社後の早期離職率:15%→5%以下
今後の予測
「説明フェーズ」の導入企業と非導入企業のあいだに、採用成功率で3倍以上の差が生じると予測されます。
「募集内容と実際の雇用条件が違った」を防ぐ施策
求職者に、「募集内容と実際の雇用条件が違った」印象を与えないための対策は、面接段階で「給与」「勤務体系」「業務内容」について、求人票との一致を再確認するチェックリストを用意し、相違があれば事前に修正することです。
求職者と求人票の相違例
- 「リモートワーク可能」
→ 実際:「週3回は出社」 - 「アジャイル開発」
→ 実際:「ウォーターフォール」 - 「新規事業」
→ 実際:「既存保守案件」
- 「リモートワーク可能」
採用担当者が今すぐすべきこと
- 各面接官向けの「説明精度チェックリスト」作成
「求人票に記載した事項について、すべて説明しましたか?」
「求人票と実態にズレがあれば、事前に説明しましたか?」 - 面接後のフィードバック記録(ズレの有無、説明内容)
■重要なポイント:数値目標の設定
- 求人票とのズレによる辞退:現在25.5%→目標5%以下
今後の予測
2026年以降、エンジニアの「求人票との一致度チェック」が厳しくなります。
わずかなズレでも辞退されるケースが増えると予測されます。
6.入社決定理由は「給与」だけではなく、「複合的安心感」

出典:株式会社ネオキャリア調査資料
Q9「入社の決め手となった理由」の上位回答から、給与だけ改善しても、ほかの要因が欠けていると内定承諾に至らないことがわかります。
- 給与条件が希望に合っていた:42.7%
- 就労場所や時間、休日が希望に合っていた:37.3%
- 開発環境や使用技術に興味があった:34.5%
- 人間関係が良好そうで風通しがよさそうだ:31.8%
採用担当者が今すぐすべきこと
- 入社の決め手の「4要素」すべてをアピール
給与表、昇進スピードを透明化
リモートワーク制度、実残業時間の実績を明記
使用技術、開発フロー、新技術導入例を説明
チームメンバーの紹介動画、社員インタビュー配信
■期待される効果
- 内定承諾率向上:70%→90%以上
- 入社後の定着率:80%→95%以上
今後の予測
2026年以降、内定承諾理由は「給与だけ」ではなく「4要素の総合評価」になります。
1つの要素が欠けても承諾率が低下するため、採用担当者は「全方位的な情報提供」を迫られます。
「複合的安心感」を構成する4つの要素
| 要素 | 意味 | 説明方法/内容 |
| 給与条件 | 正当な対価の獲得 | ・給与表の提示 ・昇進モデルを透明化 |
| 勤務条件 | ライフワークバランス | ・リモートワーク制度の説明 ・残業時間の実態提示 ・年休取得率の提示 |
| 技術環境 | 成長ができる | ・使用技術 ・開発環境 ・年間研修時間の提示 |
| 人間関係 | 安心できる | ・チームメンバーとの座談会 ・1on1の様子を動画で紹介 |
採用担当者が今すぐすべきこと
- 各要素ごとの「情報カード」作成
- 給与条件:給与表、ボーナス計算式、昇進実績
- 勤務条件:平均残業時間、リモートワーク実績、年休取得実績
- 技術環境:使用技術リスト、開発フロー、研修予算
- 人間関係:チーム構成(顔写真付き)、評判
■期待される効果
- 内定承諾率が10~20%向上
採用担当者が取るべき施策:「複合的安心感」の4層構造を満たす
求人募集の段階から面接、内定前に、4つの情報を段階的に開示することで、入社承諾率が大幅に向上します。
- 給与条件: 給与表、ボーナス、昇進スピード
- 勤務条件: 実残業時間(平均)、リモートワーク実績、年休取得率(実績)
- 技術環境: 使用技術スタック、開発フロー、新技術導入事例
- 人間関係: チーム構成、配属予定の上司・メンバー紹介、社員インタビュー動画
採用担当者が今すぐすべきこと
- 情報開示のスケジュール化
Week 1(応募段階):給与条件
Week 2~3(一次面接):勤務条件、技術環境
Week 4~5(二次面接):人間関係(メンバー紹介)
Week 6(内定前):4要素の総合確認
■期待される効果
- 内定承諾率:75% → 95%以上
- 入社後1年定着率:80% → 95%以上
今後の予測
2027年までに、4要素の「段階的情報開示」ができない企業の内定承諾率は50%以下に低下すると予測されます
7. 定番3媒体マイナビ・リクナビ・dodaの役割の違いを理解する
出典:株式会社ネオキャリア調査資料
Q10「今までに利用したことがある求人広告サービス」の回答結果によると、転職で利用したことのある転職サイトの上位3つは、マイナビ、リクナビ、dodaです。
- マイナビ転職:54.5%
- リクナビNEXT:48.2%
- doda:44.5%
これら3媒体は「どれか1つを使えばいい」のではなく、それぞれ異なる「情報収集段階」で使われています。
採用担当者が今すぐすべきこと
- 3媒体への同時掲載戦略立案
各メディアの役割分担を明確化 - 各媒体での「異なるメッセージング」を作成
今後の予測
2026年以降、複数媒体の同時掲載が採用成功の必須条件になります。
単一媒体への掲載だけでは、採用成功率は50%以下に低下するでしょう。
各媒体が果たしている役割の違い
- マイナビ転職・リクナビNEXT
求職者は「広く、一般的な求人情報を探す」段階
採用戦略: 求人情報の充実、ターゲット層への見つけやすさ対策
- doda
求職者は「自分の市場価値を知りたい」「スカウトを受けたい」段階
採用戦略: スカウト機能を活用した「直接的アプローチ」
採用担当者が今すぐすべきこと
- マイナビ・リクナビ: 「基本情報の充実」に注力
業務内容(300字以上)、給与や勤務条件、福利厚生、社風 - doda: 「スカウト機能の活用」に注力
ターゲット精度の高いスカウト配信、プロジェクト情報の具体化
■期待される効果
- 3媒体の同時掲載で、採用母集団が1.5~2倍に拡大
スカウトサービス + 転職サイトの組み合わせが必須
求職者が情報収集に利用した採用媒体の2位は、スカウトサービス(39.1%)でした。
「転職の決め手」になった採用媒体としては14.7%に落ち込み、一見すると低下しているようです。
しかし、エンジニアの情報収集フローには、以下の3つの意味があるため、段階的に必然といえる結果です。
- 転職サイト:広く情報収集
- スカウトサービス:直接評価を感じる
- 転職サイト再確認:決定前の再検証
つまり、「転職サイト」と「スカウトサービス」の両方を用いて、複数回の比較検討をおこなっているということです。
採用担当者が今すぐすべきこと
- 転職サイトへの掲載と同時に、スカウト配信を開始
- スカウト配信後、エンジニアが転職サイトで「再確認」しやすいように、掲載情報を充実させる
■重要なポイント:数値目標の設定
- 転職サイト掲載のみ:採用成功率30~40%
- 転職サイト+スカウト併用:採用成功率60~70%
今後の予測
2026年以降、「スカウト無し」での採用は困難になると予測されます。
複数媒体での「段階的な接触」が標準化するでしょう。
採用担当者が取るべき施策:複数媒体への同時掲載戦略
転職サイトやスカウトサービス、SNSなどの複数媒体を同時活用する目的と内容の理解を深めます。
| ツール | 目的 | 発信内容 |
| 転職サイト | ターゲット人材の母集団形成 | ・一般的な業務内容、給与、勤務条件 |
| スカウトサービス | ターゲット人材との効率的な接触 | ・「あなたのスキルが活躍できるプロジェクト」など具体提示 |
| SNS/企業ブログ | 信頼性やリアリティの提供 | ・技術情報、社員の声、開発現場のようす |
採用担当者が今すぐすべきこと
- 掲載スケジュールの作成
Month 1:転職サイト掲載+スカウト配信開始
Month 2:企業ブログ投稿開始
Month 3~:SNS投稿継続
■期待される効果
Month 1:応募数増加30~50%
Month 2:応募品質、スカウト確度向上20~30%
Month 3~:ブランド認知度向上、15~25%
今後の予測
2027年までに、複数媒体での「統合的採用戦略」が採用成功の必須条件になります。
単一媒体への依存企業と複数媒体活用企業の採用成功率は3倍以上の差が生じるでしょう。
8.「ファネル」で見る、各段階での脱落とその対策
採用プロセスのどの段階で求職者が脱落しているのかを把握し、早期対策をおこなうことで、採用成功率の向上が見込めます。
以下は求職者の動きと脱落率、脱落理由の一覧です。
| 求職者の動き | 脱落率 | 理由 |
| 情報収集開始 | 100% | 転職活動開始 転職意欲高い |
| 転職媒体の決定、活用 | 65.5%/転職サイト 39.1%/スカウトサービス | 情報不足 |
| 応募 | 50% | 説明不足 |
| 面接 | 25% | 説明内容の認識相違 (企業と求職者のあいだで認識の相違) |
| 内定 | 12% | 入社への不安による辞退 |
| 入社 | 10% | ー |
今後の予測
各段階での脱落率が改善されない限り、最終的な採用成功率は10%に留まります。
一方、各段階での施策を導入した企業の採用成功率は30~40%に向上すると予測されます。
各段階での採用担当者の施策
各段階における脱落率を算出して、採用フェーズごとに適切な改善施策を講じ脱落率の改善をおこないます。
| フェーズ | 脱落理由 | 施策案 | 数値目標 |
| 情報収集 | ターゲット人材に求人情報が認知されていない | ・スカウト配信 ・SEO対策 ・SNS発信 | クリック率:3% → 8% |
| 応募 | 求人情報での説明不足 | ・応募後ヒアリング ・詳細情報メール | 面接到達率:50% → 70% |
| 面接 | 業務内容と雇用条件の認識の相違 | ・配属予定先の説明 ・リアルな情報共有 | 内定率:40% → 60% |
| 内定 | 不安解消の不足 | ・段階的な説明 ・チーム紹介 ・座談会 | 承諾率:75% → 95% |
採用担当者が今すぐすべきこと
- 各段階の「脱落率測定」を開始(現状把握)
- 月ごとの改善目標設定
- 施策の実装スケジュール作成(優先度付け)
■期待される効果
- Month 1:応募数増加30~50%
- Month 2:応募品質、スカウト確度向上20~30%
- Month 3~:ブランド認知度向上、15~25%
今後の予測
2026年以降、各段階での脱落率改善が採用戦略の中核になります。
脱落率を改善できる企業と改善できない企業の間に、採用成功率で3倍以上の差が生じるでしょう。
9.本調査から見える「採用媒体の役割分担」
転職サイト(マイナビ・リクナビ・doda等)は「情報収集」に使われるが、入社決定までには至らない傾向です。
スカウトサービスは求職者と企業のあいだで「質の高い接触」を実現します。
そのため、企業が複数媒体を組み合わせることで、エンジニアは「納得度の高い決定」に至ります。
採用担当者には以下の3ステップをおこなうことが求められています。
- 広い母集団形成:転職サイト
- 質の高い直接接触:スカウトサービス
- 段階的な情報提供:複数メディア活用
採用担当者が今すぐすべきこと
- 自社の「採用課題」を各媒体にマッピング
- 採用媒体の比較、選定
活用している採用媒体の改善
既存の採用媒体の運用改善をおこなう場合は、以下の4項目を中心に改善施策を実施します。
- スカウト文面の改善
「給与・勤務条件」だけでなく「具体的なプロジェクト」「技術スタック」「成長機会」を盛り込む - 応募後のヒアリング設計
応募から面接までに、「配属先」「業務内容」「評価基準」を明確化するメール送信 - 面接での説明チェックリスト
Q8脱落理由の「説明不十分」を防ぐため、以下を必ず説明
業務内容(詳細)
評価基準・昇進モデル
配属先チーム構成
実残業時間・勤務体系 - 内定前のリアル座談会
配属予定チームとの座談会で、「人間関係」「リアルな雰囲気」を伝える
10.まとめ
本調査から見えた「転職の決定要因」は、「単一の要因」ではなく「複合的な安心感」です。
採用担当者が今すぐやるべきことは、複数ツール(スカウト+転職サイト+SNS)の組み合わせで、多層的にアプローチをおこなうことです。
また、各選考段階で丁寧な説明で、「説明不足による脱落」を最小化し、「給与」「勤務体系」「技術」「人間関係」の4要素を満たす情報提供の強化も重要です。
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