2022年10月からアルバイトの社会保険の適用が拡大|人事担当の手続きは?

アルバイト採用

2022年10月からアルバイトの社会保険の適用が拡大|人事担当の手続きは?

どの企業においても人手不足問題が深刻な現在、アルバイトやパートが会社にとって非常に貴重な戦力となっています。

一方で、アルバイト・パート社員の採用にあたり、公的保険の加入はどうすべきか悩まれる人事担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか?

実はアルバイトにも、加入が必要な「労災保険」「雇用保険」「健康保険」「介護保険」「厚生年金」の5種類の公的保険があります。

 

本記事では、

・アルバイト雇用時に必要な保険の種類や適用条件について
・アルバイトに保険をかけるメリット
・アルバイトの保険加入手続きの手順

についてご紹介します。

 

アルバイト採用をしている経営者や担当者の方は、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。

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1.アルバイト雇用時に必要な保険5種類

アルバイトに必要な保険

アルバイトを雇用した際、必要となる公的保険は社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険)労働保険(労災保険・雇用保険)

となり合計5種類あります。

ひとつずつ順にみていきましょう。

1-1.社会保険 3種類

社会保険は、「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」に分けられます。

原則として、セットで加入することが必要ですので、例えば「健康保険だけ加入したい」ということはできません。

健康保険

健康保険は、従業員やその家族が病気やケガをした時、出産、死亡時などに、必要な医療給付や手当を支給する保険です。

健康保険に加入することでもらえる健康保険証により、病院の窓口で払う金額は治療費の3割となります。

参考:厚生労働省人を雇うときのルール

厚生年金保険

厚生年金保険は、従業員が高齢や障害、死亡した時に年金として給付する保険です。

国民年金に上乗せされて給付されるものです。

参考:厚生労働省人を雇うときのルール

介護保険

介護保険は、従業員が40歳になると自動的に加入します。

従業員が65歳以上になって要支援・要介護状態となった場合や、40歳以上で末期がんや関節リウマチ等が原因で要支援・要介護状態となった場合に必要な給付をおこなう保険です。

参考:厚生労働省介護保険制度の概要

 

また、社会保険料は会社と従業員が半分ずつ負担する必要があります。

保険料のシュミレートは、厚生労働省の社会保険料かんたんシミュレーターで可能です。

参考:厚生労働省人を雇うときのルール

1-2.労働保険 2種類

労働保険は、「労災保険」と「雇用保険」に分けられます。

労災保険

労災保険は、従業員が仕事中または通勤中にケガや病気、障害や死亡した場合に必要な給付をおこなう保険です。

パートやアルバイトなどの雇用形態に関わらず、全員加入することが義務付けられている保険になります。

参考:厚生労働省労災保険給付の概要.pdf

雇用保険

雇用保険は、従業員が失業した場合や育児や介護をおこなう場合、教育訓練を受ける場合などに必要な給付をおこなう保険です。

一般的に失業保険と呼ばれているものは雇用保険の給付をさしています。

雇用保険の加入条件

雇用保険は労災保険と異なり、次の2つの条件に該当した場合はパートやアルバイトなどの雇用形態や、会社や従業員からの希望の有無に関わらず加入する義務が生じます。

(1)1週の所定労働時間が20時間以上であること

(2)31日以上の雇用見込みがあること

参考:厚生労働省労働保険おしえて!Q&A

参考:厚生労働省厚生労働省労働保険特設サイト

Q.  学生アルバイトは雇用保険に加入する義務があるのか?

原則として、昼間学生は雇用保険に加入する義務はありません。

但し、「通信教育を受けている学生」「大学や高校の夜間学生」「定時制課程の学生」については、前述の2つの条件に該当すれば加入する義務が生じます。

しかしながら、昼間学生であっても次の場合は加入する義務が生じますので注意が必要です。

 

・休学中の学生

・卒業見込み証明書を有する者で、卒業前から就職し卒業後も同じ会社に勤務予定の学生

・会社の命令や承認によって大学院等に在学する学生

・一定の出席日数を課程修了の要件としない学校に在学する者で、会社で他の従業員と同様に勤務することができると認められる学生

 

学生アルバイトを雇用する会社の場合は以上の条件を確認しておくようにしましょう。

参考:厚生労働省第4号被保険者について.pdf 

2.アルバイトが社会保険に加入するための条件とは?

アルバイトの社会保険加入条件

以下の条件に該当した場合、アルバイトも社会保険に加入する義務が生じます。

(1)勤務時間や日数が正社員の4分の3以上の場合

 「1週間の所定労働時間」及び「1か月の所定労働日数」が正社員の所定労働時間及び所定労働日数の4分の3以上であれば、社会保険の加入対象となります。

(2)週の所定労働時間が20時間以上であること

(3)賃金月額が月8.8万円(年106万円)以上であること

※以下は1ヶ月の賃金から除外されます。
・臨時に支払われる賃金や1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(例:結婚手当、賞与等)
・時間外労働、休日労働および深夜労働に対して支払われる賃金(例:割増賃金等)
・最低賃金法で算入しないことを定める賃金(例:皆勤手当、通勤手当、家族手当)

(4)2か月以上の雇用見込みがあること ※2022年10月~

(5)以下の企業のうちのいずれかで働いていること

・従業員501名以上(厚生年金の被保険者数)の勤務先
 ※法改正により、2022年10月~は従業員数101人以上の勤め先、2024年10月~は従業員数51人以上の勤め先も対象になります。

・国または地方公共団体に属した勤務先

・従業員数が500人以下でも、社会保険に加入することを労使で合意がなされている勤務先

 ※同法改正により、こちらも2022年以降随時変更されます。

Q.  短期・季節アルバイト等でも社会保険に加入する義務があるのか?

基本的に、2か月以内の短期・季節アルバイトでは社会保険に加入できないことが多いです。

具体的には、以下の場合には社会保険の加入ができません。

(1)日雇いアルバイト

※但し、1ヶ月を超えて引き続き雇用する場合は、その日から加入が必要となります。

(2)2ヶ月以内の期間を定めて雇用するアルバイト

※所定の期間を超えて引き続き雇用する場合は、その日から加入が必要となります。

(3)所在地が一定しない事業所で雇用するアルバイト

(4)季節的業務(4ヶ月以内)で雇用するアルバイト

※継続して4ヶ月を超える予定で雇用する場合は、当初から加入が必要となります。

(5)臨時的事業の事業所(6ヶ月以内)で雇用するアルバイト

※継続して6ヶ月を超える予定で雇用する場合は、当初から加入が必要となります。

Q.  従業員が51人以下の会社ではアルバイトの社会保険はいらない?

従業員が51人以下でも、法人事業所もしくは常時従業員を5人以上雇用している個人事業所では、以下の条件に該当した場合、アルバイトの社会保険に加入する義務が生じます。

 

・勤務時間や日数が正社員の4分の3以上の場合

※「1週間の所定労働時間」及び「1か月の所定労働日数」が正社員の所定労働時間及び所定労働日数の4分の3以上であれば、社会保険の加入対象となります。

参考:日本年金機構適用事業所と被保険者

参考:日本年金機構短時間労働者に対する厚生年金保険・健康保険の適用拡大が始まります 

参考:日本年金機構全国の相談・手続き窓口

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3.アルバイトを社会保険に加入させるメリットは?

アルバイト社会保険加入メリット

社会保険の加入手続き等の負担を考えると、「アルバイトに社会保険加入させたくない」というのが企業側の本音かと思います。

また、アルバイト側からしても、社会保険に加入することで手取り金額が少なくなるため、「できるのであれば加入したくない」という方もいらっしゃいます。実際にアルバイトからそのような相談を受けたことのある方も多いのではないでしょうか。

しかしながら、アルバイトであっても条件に該当すれば必ず加入させておくことが必要です。

その理由は以下の2点です。

3-1.社会保険の加入条件は法律で明記されており義務となっているため

定期的に日本年金機構が、社会保険に加入すべき従業員が加入しているかどうか調査をおこなっています。

万一、加入していない事実が発覚した場合は、過去2年遡って保険料を請求される可能性があります。

 

また万一、遡るようなことになれば、社会保険料は会社と従業員が半分ずつ負担するものであり、また社会保険は従業員の年金額に反映するものであるため、会社のみならず従業員にも迷惑をかけることになります。

金銭的なリスクはもちろんのこと、労務トラブルに発展することも十分に考えられますので、日頃からアルバイトの労働条件には注意しておくことが必要といえます。

3-2.社会保険に加入すれば、良い人材を獲得できる可能性が高くなる

多くの企業で人手不足が問題視される現在、「長く勤めてくれる人材がほしい」と考える企業は多いのではないでしょうか。

社会保険は法律で定められた福利厚生制度です。アルバイトで働く方も福利厚生がしっかりしている会社で働きたいと思うのは当然のことです。

 

もちろん、扶養の範囲で働きたい方も少なくありませんが、近年は老後の備えに2,000万円必要だという話もあり、考え方が変わってきています。
以上の点からも、福利厚生をしっかり整備している会社には、自然と良い人材が集まると考えられます。

4.2022年から社会保険の適用対象が拡大

社会保険の適用対象拡大

2.アルバイトが社会保険に加入するための条件とは? で既に触れましたが、2022年10月から社会保険の適用対象が拡大します。

この適用拡大は、2020年5月29日に成立した「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」(年金制度改正法)によって定められました。そのなかで、とくに注目されているのが「社会保険の適用拡大」です。

 

今回の改正でのポイントは大きくわけて2つあります。

1つめのポイントは、企業規模が段階的に拡大されることです。
これまでは従業員数501人以上の企業に対して社会保険の適用義務がありましたが、その範囲を段階的に拡大し、2022年には従業員数101人以上、2024年には51人以上に拡大していく予定です。

 

また、2つめポイントは1年以上の勤務期間要件が撤廃されることです。
現段階では、従業員数501人以上の企業のアルバイトへの保険適用に際しては、「雇用期間1年以上の見込」とされていますが、法改正により撤廃されます。

今後は、フルタイムなどの従業員と同様に「雇用期間2か月超の見込」が要件となります。

参考:厚生労働省社会保険適用拡大特設サイト(パート・アルバイト)

5.社会保険・労働保険への加入手続き

アルバイト社会保険加入手続き

アルバイトが社会保険の加入条件に該当した場合は、会社はどのように加入手続きをおこなえばよいのでしょうか?

それでは手順をみてみましょう。

5-1.社会保険の加入手続き

電子申請

社会保険の加入手続きについては、2020年4月から電子申請の義務化が始まっています。

義務化の対象は、資本金等の額が1億円を超える特定の法人の事業所1などです。

電子申請での手続き方法は厚生労働省のyoutubeチャンネル※2にてわかりやすく説明しています。

※1参考:厚生労働省2020年4月から特定の法人※について 電子申請の義務化が始まっています.pdf

※2参考:厚生労働省電子申請方法まるわかりガイド

郵送申請

健康保険、厚生年金、介護保険の加入手続きは、資格取得届1つで同時におこなうことができます。

具体的には、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 厚生年金保険70歳以上被用者該当届」を事実発生から5日以内に会社の所在地を管轄する年金事務所へ提出します。

但し、会社が健康保険組合に加入している場合は、組合上の手続きも必要となります。

 

原則として添付書類は必要ありませんが、会社が特に注意すべき点は、加入者のマイナンバーと本人確認を徹底することです。

本人確認がおこなえない場合は健康保険証を発行してもらえないため、必ず運転免許証などによって本人確認をおこなっておくことが必要です。

参考:日本年金機構健康保険・厚生年金保険 適用関係届書・申請書一覧

5-2.労働保険の加入手続き

労災保険も雇用保険も、1人以上雇用する場合最初に申請が必要です。
その際、一元適用事業所と二元適用事業所では申請方法が異なります。適用事業所の詳細はこちら

労災保険

労災保険はアルバイトごとの加入手続きは必要ありません。

 

労災保険は、従業員を雇用した際、事業所単位で「保険関係成立届」と「概算保険料申告書」を会社の所在地を管轄する労働基準監督署に提出することで、すべての従業員が労災保険に加入することになります。

保険関係成立後は1年度に1回申告・納付手続きをおこなうことが必要となります。

 

会社が注意しなければならない点は、たとえ1日しか勤務していないアルバイトであっても、仕事中や通勤途中にケガなどが起きた場合は労災保険の給付手続きが必要となる点です。

労災隠しは厳しく罰せられることにもなりますので十分注意してください。

雇用保険

雇用保険はアルバイトを1人雇用するごとに申請が必要になります。

雇用保険の申請方法は、「雇用保険被保険者資格取得届」を会社の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に、採用月の翌月 10 日までに提出します。

 

雇用保険被保険者資格取得届には1週の所定労働時間や雇用契約期間の定めの有無などを記入する箇所がありますので、雇用時に労働条件通知書などでしっかりと確認しておくことが必要です。

 また、前職のある方の場合は、前職時の雇用保険被保険者番号を確認しておきましょう。

番号が分からない場合は、前職の会社名などからハローワークに検索してもらうことができます。

参考:厚生労働省事業主の行う雇用保険の手続き

参考:厚生労働省 労働保険制度(制度紹介・手続き案内)

6.まとめ

POINT!

本記事の要点は以下の通りです

■アルバイトであっても、条件が該当すれば加入しなければならない保険が5種類ある。

■労災保険の加入条件は特になく、雇用した時点で加入が義務付けられている保険。一人ひとり個別に手続きをおこなう必要はない。

■雇用保険は、「1週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあること」という条件に該当した場合に、加入手続きが必要となる。

■社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金)は、原則「1週の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上であること」という条件に該当した場合に、加入手続きが必要となる。

■法改正により中・小規模事業者もアルバイトの社会保険加入が義務になる。

法改正によりアルバイトの保険が義務化されたため、今までアルバイトの保険をかけていなかった企業様でも加入が急務となりました。

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