退職金なしは違法?メリット・デメリットや対処法をご紹介!

転職活動をしていると退職金なしの企業があることに気付き、このような企業に就職しても良いのかと不安に感じている人もいるかと思います。 

そこで、本記事では退職金なしの企業に就職しても問題がないのか、退職金なしの企業に就職するメリット・デメリットは何か、退職金がなくても乗り切るための対処法などについてお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてみてください。

この記事のまとめ

  • 退職金のない企業は全体の2割、5社に1社は退職金がない
  • 退職金は福利厚生の一つなので、退職金がなくても違法ではない
  • 退職金ある企業であっても、退職金が貰えないケースがある。また、退職金の支給額は減少傾向にある
  • 退職金がない場合には、「個人年金」「iDeCo」「財形型貯蓄」などをし将来に備える

退職金なしの会社は約2割、5社に1社は退職金がない

退職金制度は全ての企業にあるというイメージを持っているかと思いますが、『厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」』によると、退職金制度を導入している企業は全体の80.5%であり、約2割の企業には退職金がありません。

従業員数別にみると、従業員人数が少ない企業ほど退職金制度がないことが分かります。


※参照:『厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」』 退職金はあくまで福利厚生の一貫であるため、資金力のある企業ほど制度を整えやすいことから、このような結果となっているといえます。

POINT

  • 「退職金がない」のは違法?

    前述の通り、退職金は各企業で定められた福利厚生の一つです。そのため、企業が退職金を必ず支払わなければならないといった法的義務はなく、違法ではありません。
    「退職金がない企業はやばい」という話を聞くかもしれませんが、このやばいには「退職金がない=違法」という勘違いから「そういう会社はやばい」と感じている人が一定数いるだけで、決して退職金がないことはやばいことでありませんのでご安心ください。

退職金制度が整っている場合でも注意すべき点

退職金制度がある企業であれば、老後や退職した際に安心だと考えているかも知れませんが、注意すべき点がありますので確認しておきましょう。

退職金を貰えないケースがある

仮に退職金制度があっても受け取れない場合もあります。下記のような場合には、退職金は受け取れませんので、事前に確認しておきましょう。

勤続年数が足りない

退職金制度は基本的に勤続年数と功績によって支給額が異なります。

支給開始年数を「3年以上」と設定している企業が多いのですが、中には「5年以上」と定めている場合もあります。 退職後に退職金が貰えないことに気付くケースもありますので、事前に確認しておくとトラブルなく退職することができます。

余談ですが、自己都合退職の場合、会社都合退職と比べてもらえる額が少ないので、その点も知っておきましょう。

雇用形態の違い

近年同一労働同一賃金の制度により、同じ業務を行った場合には、正社員・非正規社員の壁なく同じ対価を支払うことが義務付けられていますが、退職金においてはあくまで福利厚生であるため、法的義務はありません。

そのため、退職金の福利厚生が整備されている場合であっても非正規社員には支給されないケースもありますので、ご注意ください。

『独立行政法人労働政策研究・研修機構「パートタイム」や「有期雇用」の労働者の活用状況等に関する調査結果」』によると、非正規社員に退職金を支払っている企業の割合は1割にとどまります。支給額も1万円~とかなり少額な場合が多いようです。

退職金の支給額は減少傾向にある

退職金を見込んで老後資金を貯めようと考えている人もいるかと思いますが、『厚生労働省「就労条件総合調査」』によると、定年退職後受け取れる退職金の平均額は年々下がっていることがわかります。

※参照:『厚生労働省「就労条件総合調査」』 ※勤続20年以上かつ45歳以上で定年退職した従業員が対象

合算値でみると、平成30年までの20年で約500万円も支給額が下がっています。大卒の減少額が最も大きく、約900万円も減額しています。

退職金が受け取れる会社に勤めていたとしても、「退職金の額」が保証されているわけではないことを加味すると、老後の資金を用意したいと考えている方は退職金に頼りすぎず、自分で積み立てておく必要があるといえます。

退職金がない場合のメリット

退職金がない企業に就職するか悩んでいる方もいるかと思います。
ここでは、退職金がないメリットをお伝えしますのでぜひ参考にしてみてください。

月給が高く設定されている

退職金制度を導入している企業の場合、退職金を支給するために積立をしておく必要がありますが、退職金を用意していない会社の中には、退職金を支払わない代わりに月々の給与やボーナスを高めに設定して賃金還元している会社もあります。

自身の年齢や勤続年数によっては、退職金がなくても日々の給与が高い方がありがたいケースもあるでしょう。

老後の資金計画が立てやすい

前述の通り退職金制度がある企業であっても「支給額」が保証されている訳ではないため、業績悪化などにより、退職金が減額されることも充分に考えられます。

受け取れる想定額を見誤ってしまうと、老後設計の計画が崩れてしまう可能性もあります。

一方、退職金がない場合、予め退職金がないことを見越して資産運用や貯蓄を行うため老後資金の目算が立てやすく、大きく資金計画が崩れることないでしょう。

退職金がない場合のデメリット

ここでは、退職金がない場合のデメリットをお伝えしていきます。

老後の資産形成を行う必要がある

退職金は基本的に老後の生活資金に当てることが一般的です。日々の生活資金とは別に老後のために貯蓄・資産運用をして資金を蓄えることはなかなか難しいと感じている人も多いはずです。

退職金がない場合には、自ら老後のためにコツコツと貯蓄・資産運用をしていかなければならない点がデメリットといえるでしょう。

万が一に備えておく必要がある

退職金は自身が退職する際に貰うものですが、万が一退職前に死亡してしまった場合であっても、遺族が代わりに退職金を貰うことができます。(死亡退職金)※遺族が受け取る場合は、相続税の課税対象となる。
死亡退職金の支給額は、勤続年数や功績によって異なりますが、一般的には1,000~2,000万万円程度です。
このように、退職金がある場合、死亡保険のような役割を担ってくれるため万が一への備えができます。

退職金がない場合には、不慮の事故に備えて生命保険、学資保険などに入っておくなど万が一への備えを入念に行っておいたほうが安心でしょう。

POINT

  • 「死亡弔慰金」を貰えるケースもある

    「死亡弔慰金」とは、社員本人が死亡した際、もしくは社員の家族が亡くなった際に会社が支払う見舞金のことをいいます。
    こちらも福利厚生の一つなので、全ての企業で支払われるわけではありませんが、退職金制度がない企業であってもこのような制度を整えている可能性もありますので、福利厚生について事前に確認してみてください。

    死亡弔慰金の支給額は企業によって異なるためかなりばらつきがあります。
    業務中:10~1000万円
    業務外:2~1500万円
    ※参照:税制経営研究所    
    企業によっては、「死亡退職金」に加えて「死亡弔慰金」も支給される場合もありますので確認しておくと良いでしょう。

退職金なしの場合の対処法は?

退職金がない企業で働く場合には、どのように対処していけば良いのでしょうか。
ここでは3つの対処法をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

個人年金を利用する

個人年金保険とは、60歳・65歳など一定の年齢まで保険料としてお金の積立をし、払込が完了後、今までの積立金をもとに年金として支給してもらう保険のことをいいます。

積立方法には、将来の年金額が決まっている「定額年金」と運用によって年金額が変わる「変額年金」があります。

その他にも年金の受取期間によっても保険の種類が異なり、10年、15年といった固定のもの、終身払いのもの、一時払いのもの、自分が死亡した際に遺族が代わりに年金を受け取れるものなど様々な種類がありますので、興味のある方は一度保険会社に相談してみると良いでしょう。

個人年金保険に加入すると、一定の条件(個人年金保険税制適格特約がつけられる保険、保険料払込期間が10年以上、受取開始が60歳以降かつ10年以上など)を満たしている場合には、年末調整時に最大4万円の控除を受けることができます。

iDeCo(個人型・企業型確定拠出年金)を利用する

iDeCoとは、国民年金や厚生年金といった公的年金とは別に給付を受けることができる私的年金制度のことです。

月々の掛け金を自分で設定し、自ら指定した商品(投資信託など)で運用し、60歳以降に年金もしくは一時金として受け取ります。受取額は運用成果によって変動する仕組みとなっています。

掛け金が全額所得控除となる、利息・運用益が非課税である・受取時も一定額まで税制優遇されることなどから導入が広がっています。

月々の掛け金の上限額は、自営業か会社員か、企業で確定給付型の年金がある会社員が個人型で運用する場合でも異なりますので事前に確認する必要がありますが、仮に退職金がない企業であってもiDecoは導入している企業も増えていますので、この制度をうまく活用していくのも一つの手でしょう。

POINT

  • iDeCo(企業型確定拠出年金)の導入企業数は増えている

    『厚生労働省「企業型確定拠出年金制度」』の調査によると、企業型DC導入企業数は、2022年3月時点で約42,000社となっています。

    ※参照:『厚生労働省「企業型確定拠出年金制度」
    大手企業でだけでなく、中堅・中小企業の間でも導入の動きが広がっています。

貯蓄をする(財形型貯蓄・定期預金など)

次に貯蓄をすることです。当たり前にやっている人が多いかと思いますが、「通帳に振り込まれた分だけ使ってしまう」という方の場合には、財形貯蓄制度や定期預金を活用するという手法もあります。

財形貯蓄制度は、給料から貯蓄希望額が天引きされ自動で貯蓄ができる制度のことです。
財形貯蓄制度の中には、老後の資金作りを目的として60歳以降に受け取りが可能となる「財形年金貯蓄」があります。(550万円までの元本にかかる利子が非課税)

「財形年金貯蓄」は基本的に老後資金として貯蓄することが目的であるため、それ以外の目的で引き出す場合には、非課税措置が受けられなくなるなどのペナルティが発生してしまうため、簡単に引き落とせないので貯蓄資金を貯めやすいでしょう。
仮に、老後資金以外の目的でも使用する可能性がある際には「一般財形貯蓄」を利用することもできます。

定期預金は、預入期間を定めて預金をすることをいいます。指定する期間は1ヵ月~10年以内が一般的です。 基本的に定めた期間内に引き落とすことはできないため、すぐに使ってしまいそうな人は定期期間を10年に定めておくと良いでしょう。
自動つみたてを利用すると指定した口座から自動で定期預金に積立をしてくれるため手間なく貯蓄ができます。

POINT

  • 退職後に必要な資金額はいくら?

    そもそも老後にはどのくらいの金額がかかるのかを知っておかなければ、退職金が必要かどうかを知ることは難しいでしょう。

    一般社団法人全国銀行協会』によると、老後の生活を送るために公的年金を支給された場合、老後の生活を送るために足りない金額は「月6万7,500円」と試算されています。(2人世帯)
    年金受給開始の65歳からを老後とし、90歳まで生きると仮定すると約25年間。
    6万7,500円×12ヵ月×25年=2,025万円

    最低でも2,025万円は用意をしておくべきです。
    介護や入院といった事態を想定するとさらに必要な資金は増大しますので、堅実に計画を立てておくと安心でしょう。

思い切って転職をする

現在退職金がない企業で勤めており、どうしても将来への貯蓄を自分で行うことはできないと感じている場合には、思い切って退職金のある企業に転職するという方法もあるでしょう。

前述の通り、退職金が支給されるとしても支給額は固定ではないため必ずしも望み通りにいくとは限りません。この点を理解したうえで、それでも転職したほうが自分には合っていると感じるのではあればこれも一つの選択肢です。

ただし「退職金が欲しいから」という理由だけで転職をするのはナンセンスです。1日の3分の1、言い換えれば人生の3分の1は仕事の時間ですので、社風は自分に合っているのか、自分のやりたい仕事なのか、スキルアップのできる環境なのかなど、自分の仕事選びの軸に合った企業かどうか慎重に見極めたうえで判断すると良いでしょう。

この記事を書いた人

元中途求人広告アドバイザー
こばさん

不動産会社での営業経験を経て、中途求人広告アドバイザーに転身。これまでに中小・ベンチャー企業を中心に100社以上の中途採用をご支援してきました。現在は3人の子供たちの子育てとキャリアの両立に奮闘中です。
自身の経験を活かし、転職・就職活動に役立つ情報だけでなく、働く女性のキャリアライフを充実させるコンテンツやFP2級の資格も保有しているので働くうえで役立つマネー情報をお届けしていきます。

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2024.03.22

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【ケース別】退職金の計算方法まとめ|退職金の種類・税金もわかりやすく紹介

「退職金をいくら受け取れるか知りたいけど計算方法がわからない」とお悩みではありませんか?退職金をいくら受け取れるかによって、今後の何にどれくらいお金をかけるべきかが変わってくるかと思います。   本記事ではケース別に退職金の計算方法をご紹介いたします。退職金の種類やかかる税金についてもわかりやすくお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。   この記事のまとめ 退職金とは労働者が企業を退職する際に受け取れるお金を指し、退職手当や退職慰労金とも呼ばれる 退職金制度は主に4種類ある 退職金として受け取れる額は企業ごとのルールや勤続年数、役職などの様々な要素によって決まる 退職金にかかる税金は大きく「所得税」「住民税」の2種類 そもそも退職金とは? 退職金とは労働者が企業を退職する際に受け取ることができるお金のことで、退職手当や退職慰労金とも呼ばれています。   制度の正式名称は「退職給付制度」ですが、一般的には退職金制度と呼ばれており、この制度を取り入れている会社でのみ退職金を受け取ることができます。   退職金は定年退職の時だけでなく、会社都合で解雇された時や自己都合で退職する場合にも受け取れるもので、労働者が亡くなった場合にも適用されます。   退職金の受け取り方は「一時金タイプ」「年金タイプ」に大別されます。   退職金の種類 退職金制度で得られるお金は主に「退職一時金」「退職金共済」「確定給付年金」「確定拠出年金」の4種類がありますので、下記でそれぞれチェックしておきましょう。   退職一時金 退職一時金の受け取り方は「一時金タイプ」に分類され、勤続年数や退職理由、基本給や役職などによって企業ごとに計算方法が決められています。   企業の経営状態にかかわらず、規定が変更されない限り受け取ることができます。   退職金共済 退職金共済は企業が加入している共済を通じて退職金を受け取れるという制度で、受け取り方法は「一時金タイプ」に分類されます。   条件を満たせば一括払い、分割払い、一部分割、その併用も選択することが可能です。計算方法は下記になります。   掛け金 × 納付月数 +α ※「+α」には付加退職金、利回りなどが含まれます ※掛け金の額は企業が決定します 退職金共済で受け取れる金額は、掛け金の額や勤続年数(納付月数)によって異なります。   企業の経営状況に関係なく積み立てた分の額を受け取れるメリットがありますが、共済を介している分、制度によっては積み立てられる金額が比較的少ない場合もあるため留意しましょう。   確定給付年金(DB) 確定給付年金(DB)は労働者が退職金として受け取れる給付額があらかじめ決められている企業年金制度で、企業の経営状態にかかわらず決められた金額を受け取ることができます。   原則として60歳以降に受け取れるもので、企業の規約によっては制限がありますが、一般的には一時金タイプ、年金タイプ、またはそれらの併用の3パターンから受け取り方を選べます。計算方法は下記の通りです。   掛け金 × 納付月数 +α ※「+α」には付加退職金、利回りなどが含まれます ※掛け金の額は企業サイドで決定されます こちらも、掛け金の額や勤続年数(納付月数)次第で受け取れる金額が異なります。   確定拠出年金(DC) 確定拠出年金(DC)は事業主や加入者自ら掛金を拠出し、資産運用を行い、その成果次第で将来受け取れるの年金額が決まるという制度で、掛金額(拠出額)が決められている(=Defined Contribution)ことからDCとも呼ばれます。   これには企業が運用する「企業型確定拠出年金」と、個人で加入する「個人型確定拠出年金(iDeCo)」の2種類が挙げられ、下記の計算方法で金額が求められます。   掛け金 × 納付月数 + 運用結果 ※掛け金の額は企業サイドで決定されます こちらは掛け金の額や勤続年数(納付月数)、運用の仕方によって金額が異なります。   退職金制度がない企業もある 退職金はどの企業でも受け取れると考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、退職金制度の導入は法律で定められているものではなく、導入していない企業も一部存在します。   人事院「令和3年民間企業の勤務条件制度等調査の実施及び令和2年の調査結果について」によれば、退職金制度のある企業の割合は下記の通りとなっています。   退職給付制度がある企業:91.9% (事務・技術関係職種の従業員がいる企業が対象) └「退職一時金制度」がある企業:91.2% └「企業年金制度」がある企業45.8% 自分の勤めている会社に退職金制度があるかどうかは就業規則か労働協約次第になりますので、まずはチェックしてみましょう。また、退職金の支給額(支給内容)についても企業によって異なります。   退職金の相場はどれくらい? 総務省統計局の「令和5年就労条件総合調査」によれば、退職理由別の退職金は下記のようになっています。 これによれば退職金の相場は月収の約40か月分前後となっています。   早期優遇退職(企業がリストラの一環として退職希望者を募るもの)では退職金が上乗せされるため最も金額が高くなっていますが、一方、自己都合退職では減額措置が取られるためその水準は最も低くなっています。   受け取れる退職金の額は企業の規定、企業規模、退職理由、勤続年数、学歴、業種などによって大きく異なることがわかるでしょう。 【ケース別】退職金の計算方法 ここからは先ほどお伝えした4つの退職金制度ごとの計算方法をご紹介します。ぜひご自身に当てはめて計算してみてください。   退職一時金 まずは退職一時金の計算方法についてですが、これにはいくつか計算方法があるため代表的な4種類の計算方法をご紹介したいと思います。   定額制 定額制は、勤続年数によって退職金の額が決まるものになります。たとえば勤続年数が10年なら100万円、20年なら250万円、などとあらかじめ決められた額が支給され、成果や役職は加味されません。   実際に受け取れる金額は就業規則や退職金規程によって異なりますので、ぜひ確認してみてください。   基本給連動型 次に基本給連動型です。これは勤続年数、退職時の基本給を加味して退職金の額が決まるものになります(企業によっては退職理由や役職も考慮されます)。   支給係数は企業ごとに異なりますが、基本的には勤続年数に応じて上がっていくケースが多くなっています。   退職理由も加味する際には会社都合で×1.0、自己都合で×0.8(会社都合の場合よりも2割減る)などと設定している企業が多い傾向があります。   <前提となる支給係数> 勤続年数における支給係数 └勤続3年目:1.8 └勤続10年目:10 └勤続20年目:20 退職理由における支給係数 └会社都合退社:1 └自己都合退社:0.8 <計算例> (1)勤続3年目、基本給25万円、自己都合退職 └25×1.8(3年目の係数)×0.8(自己都合)=36万円 (2)勤続10年目、基本給30万円、自己都合退職 └30×10(10年目の係数)×0.8(自己都合)=240万円 (3)勤続20年目、基本給40万円、会社都合退職 └40×20(20年目の係数)×1(会社都合)=800万円 別テーブル制 別テーブル制は、勤続年数に応じて基準額が設定されているもので、役職や等級、退職理由をもとに作成された表(テーブル)をもとに計算されます。   <前提となる支給係数> ■役職別基準額 └一般社員:70万円 └課長:100万円 └部長:180万円 ■役職別支給係数 └一般社員:0.8 └課長:1.2 └部長:1.6 ■退職理由における支給係数 └会社都合退社:1 └自己都合退社:0.8 <計算例> (1)勤続3年目、一般社員、自己都合退職 └70×0.8(役職別の係数)×0.8(自己都合)=44.8万円 (2)勤続10年目、課長、自己都合退職 └100×1.2(役職別の係数)×0.8(自己都合)=96万円 (3)勤続20年目、部長、会社都合退職 └180×1.6(役職別の係数)×1(会社都合)=288万円   ポイント制 ポイント制は退職時の基本給、勤続年数、退職理由、人事評価などをもとに在職1年あたりのポイントが決められ、最終的な累計ポイント数に応じて金額が決まるものになります。   <前提となるポイント・係数> ■1ポイントあたりの単価 └1万円 ■勤続年数・加算ポイント └勤続一年ごとに+10ポイント ■役職別・加算ポイント └一般社員:なし └課長:10ポイント └部長:20ポイント ■退職理由における支給係数 └会社都合退社:1 └自己都合退社:0.8 <計算例> (1)勤続3年目、一般社員、自己都合退職 └10(勤続年数による加算ポイント)×3年×0.8(自己都合)×1万円(ポイント単価) =24万円 (2)勤続10年目、課長、自己都合退職 └10(勤続年数による加算ポイント)×10年×0.8(自己都合)×1万円(ポイント単価) =80万円 (3)勤続20年目、部長、会社都合退職 └10(勤続年数による加算ポイント)×20年×1(会社都合)×1万円(ポイント単価) =200万円 退職金共済 退職金共済は「月額掛け金×納付月数」で決まるものになります。   月額掛け金は中退共(独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部)の場合5,000円~3万円の間に16種類あり、企業が勤続年数などを考慮して掛け金を決定します。   中退共の「基本退職金額表」を基にすると、計算例は下記のようになります。   <計算例> (1)勤続4年目 └掛け金1万円×48か月+1.0%(利回り)=48万1,700円 (2)勤続10年目 └掛け金1万円×120か月+1.0%(利回り)=126万5,600円 (3)勤続20年目 └掛け金1万円×240か月+1.0%(利回り)=266万6,600円 確定給付年金(DB) 確定給付年金も「掛け金月額×納付月数」で決まるほか、月額掛け金は企業ごとに定められています。   <計算例> (1)勤続10年目 └掛け金1万円×120か月+利回り (2)勤続20年目 └掛け金1万円×240か月+利回り 確定拠出年金(DC) 最後に確定拠出年金です。こちらも「掛け金月額×納付月数」で決まります。   運用は事業主あるいは社員個人が行うことになり、運用が成功すればその分受け取れる額が増えますが、もし失敗すれば受け取れる額が減ってしまう点に注意が必要です。   <計算例> (1)勤続10年目 └掛け金1万円×120か月+利回り (2)勤続20年目 └掛け金1万円×240か月+利回り 退職金にかかる税金は「所得税」と「住民税」 退職金は退職所得として税金が課せられ、具体的には「所得税」「住民税」の2種類を修めることになります。   退職金の中でも退職一時金については受け取る額が大きくなりやすい分納める税金も高くなりやすいですが、所得税については「退職所得控除」によって税負担が軽くなるよう配慮されています(計算式上、結果的に住民税の負担も軽くなることになります)。   また、他の所得とは別で課税されるため余計に税金を納める必要はありません。控除を受けるには「退職所得申告書(所得税法第203条1項各号の定めによる申請書)」を職場に提出する必要があります。   提出後は職場に手続きを進めてもらえますので、退職一時金を受け取った後に源泉徴収などを申請する必要はありません。   控除額・課税対象額の計算方法 具体的な控除額、課税対象額はの計算方法は下記の通りです。   (1)勤続年数が20年以下の場合 └勤続年数×40万円 (退職所得控除額が80万円未満の場合には、80万円) (2)勤続年数が20年以上の場合 └(勤続年数-20)×70万円+800万円 ※勤続年数は1年未満の端数を切上げて計算 ※参考元:人事院「退職手当制度の概要」 また、課税対象額は「(退職金-控除額)×1/2」で求めることができます。   (1)勤続10年、退職金240万円の場合 └240万円-(10年×40万円)=-160万円 →退職金240万円は控除額400万円以内に収まるため、税金はかかりません。 (2)勤続30年、退職金2800万円の場合 └(30年-20)×70万円+800万円=1500万円 →1500万円までは税金がかからず、課税対象となるのは(退職金2800万円-1500万円)×1/2=650万円となります。 ちなみに、今後の転職先がまだ決まっていないという場合には可能な限り早く見つけるのがベターです。というのも、転職市場においては退職後のブランクが長くなればなるほど企業から内定が出にくくなるためです。   「なかなか内定が出ずに困っている」「どんな企業を選べば良いのかわからない」という方は転職エージェントに相談すると安心です。   転職相談だけでなく求人紹介や選考対策などを講じてもらえるほか、サービスによっては企業へ推薦してくれる場合もありますのでぜひ活用してみてください。 ▼関連記事 「転職エージェントとは」 「転職エージェント おすすめ」

2024.03.22

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【退職金の税金】初心者でもわかりやすい「所得税」「住民税」の計算方法

退職金を受け取る際には「所得税」「住民税」が課税されることになりますが、これは受け取る退職金の額によって異なってきます。   本記事では退職金にかかる所得税と住民税の計算方法をわかりやすくまとめましたので、ぜひ参考にしてください。   この記事のまとめ 退職金にかかる税金は「所得税(所得税、復興特別所得税の2種類)」「住民税」 退職金にかかる税金の額は、勤続年数や会社から出る退職金の金額によって異なる そもそも「退職金」とは? 退職金とは労働者が企業を退職する際に受け取ることができるお金のことで、退職手当や退職慰労金とも呼ばれています。   制度の正式名称は「退職給付制度」ですが、一般的には退職金制度と呼ばれており、この制度を取り入れている会社でのみ退職金を受け取ることができます。   退職金は定年退職の時だけでなく、会社都合で解雇された時や自己都合で退職する場合にも受け取れるもので、労働者が亡くなった場合にも適用されます。   退職金制度で得られるお金は主に「退職一時金」「退職金共済」「確定給付年金」「確定拠出年金」の4種類(本記事では「退職一時金」の場合の税の計算方法をご紹介いたします)があり、退職金の受け取り方は「一時金タイプ」「年金タイプ」に大別されます。 退職金にかかる税金は「所得税」と「住民税」 退職金にかかる税金は「所得税」「住民税」の2種類になります。   これらの税金は給与やボーナスを受け取る際にもかかりますが、退職金はその他の所得と区別して課税されるため、税のかかり方が異なります。   まずは前提知識として、所得税と住民税の基本をおさらいしておきましょう。   所得税とは? 「所得税」は個人の所得に対してかかる税金で、一年間における全ての所得から所得控除額を引いた残りの額(課税所得)にかけられます。   所得税の課税方法には「総合課税」「分離課税」の2つが存在します。 退職金(退職所得)は分離課税となるため、その他の所得と分けて課税されることになります。   また、退職金にかかる所得税には「退職所得控除(課税対象となる退職所得額を計算する過程で一部の額が控除される)」が適用され、この金額は勤続年数が長いほど大きくなります。   中でも退職一時金の場合は一度に受け取れる額が多くなりやすいためかかる税負担も大きくなりがちですが、この退職所得控除によって税負担が軽くなるよう配慮されているのです。   【退職所得控除について】 退職所得控除を受けるには「退職所得申告書(所得税法第203条1項各号の定めによる申請書)」を職場に提出する必要があります。 提出後は職場に手続きをしてもらえるため、退職一時金を受け取った後に源泉徴収などを申請する必要はありません。 また、平成25年から令和19年までは所得税に加えて「復興特別所得税(東日本大震災からの復興施策に必要な財源確保のために課されることになった税金)」も納める必要があり、所得税額に対して2.1%が追加的に課税されます。   住民税とは? 住民税は地方税のひとつで、道府県民税と市町村民税の総称で、教育や福祉、救急、ゴミ処理などの公共サービスのために使用されます。住民税には「均等割」「所得割」があります。 先ほどもお伝えした通り退職金(退職所得)にかかる住民税は分離課税となるため、退職所得が生じた年に他の所得と区別して課税されることになります。   1月1日から5月31日までに退職した場合、基本的には退職月の給与や退職金から5月分までの住民税を一括で徴収されることになります(退職月の給与と退職金の合計よりも住民税額が多い場合は普通徴収に切り替わり、自分で納付することになります)。   6月1日から12月31日までに退職した場合、退職月の住民税は給与から天引きされる形で会社に徴収されます。   その翌月以降に納付予定の住民税は普通徴収に切り替わるため、自分で納付することになります(この場合は自治体から普通徴収のための納税通知書が届きます)。   退職金にかかる「所得税」の計算方法 ここからは退職金にかかる所得税と住民税の計算方法を見ていきましょう。   まずは所得税についてですが、ここでは「所得税」「復興特別所得税」の2つについてお伝えします(繰り返しになりますが、ここでは退職一時金の場合の税の計算方法をご紹介いたします)。   退職金にかかる「所得税」の計算方法 退職金にかかる所得税額は下記の計算式で求めることができます。   【退職金の所得税額の計算式】 退職金の所得税額 =課税退職所得金額×所得税率-控除額 上記を計算するには「課税対象となる所得金額」「所得税率」「控除額」を知る必要があります。順に把握していきましょう。   (1)退職所得控除額の計算式 まずは「課税退職所得金額(受け取れる退職金のうち、課税対象になる額)」を求めるために「退職所得控除額」を求めましょう(退職金の所得税額の算出式にある「控除額」とは別です)。   (1)勤続年数が20年以下の場合 └勤続年数×40万円 (退職所得控除額が80万円未満の場合には、80万円) (2)勤続年数が20年以上の場合 └(勤続年数-20)×70万円+800万円 ※勤続年数は1年未満の端数を切上げて計算 └例)10年3ヶ月→「11年」で計算 ※参考元:人事院「退職手当制度の概要」 (2)課税対象となる退職所得金額の計算式   次に、「課税退職所得金額」を算出しましょう。こちらは(退職金の金額-退職所得控除額)×1/2で求められます(「退職所得控除額」の部分には先ほど計算した控除額を当てはめましょう)。   具体的な計算式は、たとえば下記のような形となります。   (1)勤続10年、退職金240万円の場合 └(10年×40万円)=400万円 →退職金240万円は控除額400万円以内に収まるため、税金はかからない (2)勤続30年、退職金2800万円の場合 └(30年-20)×70万円+800万円=1500万円 →1500万円までは税金がかからず、課税対象となるのは(退職金2800万円-1500万円)×1/2=650万円 (3)最終的にかかる所得税を計算しよう では一番最初にお伝えした、退職金に最終的にかかる所得税を計算しましょう。 【退職金の所得税額の計算式】 退職金の所得税額 =課税退職所得金額×所得税率-控除額 この式にある「所得税率」「控除額」は課税退職所得金額ごとに税法によって定められています。詳しくは国税庁のWebサイトをご参照ください。   退職金にかかる「復興特別所得税」の計算方法 次に、復興特別所得税の計算についてですが、これは上記で導き出された所得税額(基準所得税額)に2.1%の税率をかけるだけで算出することができます。   【復興特別所得税額の計算式】 復興特別所得税額=基準所得税額×2.1% 退職金にかかる「住民税」の計算方法 次に退職金にかかる「住民税」の計算方法について見ていきましょう。こちらは先ほど算出した「課税退職所得金額」に「住民税率」をかけることで算出できます。   住民税率は課税退職所得金額に関係なく一律10%(都道府県民税4%、市区町村税6%)となります。   【住民税額の計算式】 住民税額=課税退職所得金額×住民税率10% 退職金にかかる税金の計算例 計算方法を把握していただいたところで、ここからはケース別に実際の計算式をご紹介します。ここでは早期退職したケース、長年勤めて退職したケースを例として見ていきましょう。   【ケース1】勤続年数3年、退職金30万円 まずは勤続年数3年で退職し、退職金が30万円のケースです。「所得税」「復興特別所得税」「住民税」について順に計算していきましょう。   まずは退職控除金額を算出します。前述した計算式に則ると、勤続年数が20年以下の場合は勤続年数×40万円のため、下記の通りとなります。   退職控除金額:3年×40万円=120万円 (退職所得控除額が80万円未満の場合には80万円となるが今回はこのケースに当てはまらない) この時点で控除額の120万円が退職金の30万円を上回っているため、所得税、復興特別所得税、住民税は非課税となります。   【ケース2】勤続年数24年3ヶ月、退職金2,200万円 次に、勤続年数24年3ヶ月で退職金が2,200万円のケースです。   所得税の計算例 まずは所得税を算出するにあたって控除額を計算しましょう。今回は勤続年数24年3ヶ月ということで、控除額を算出するにあたっては端数を切り上げて25年扱いとします。   勤続年数が20年を越えているため、所得税の控除額は下記の計算式で求めることができます。   退職控除金額:(25年(勤続年数)-20)×70万円+800万円 =1150万円 控除額は1150万円であることがわかったため、次に課税退職所得額を算出します。   課税退職所得額:(退職金額 2,200万円-退職所得控除額1150万円)×2分の1 =525万円 あとは所得税額を求める式に必要な情報を当てはめるだけです。   上記でもお伝えした国税庁のデータによれば、課税退職所得額が525万円の場合の所得税率は20%、控除額は42万7,500円となっているため、このケースの所得税額は下記の通りとなります。   所得税額:課税退職所得額575万円×税率20%-控除額42万7,500円 =72万2,500円 復興特別所得税の計算例 次に復興特別所得税の計算について見ていきましょう。先ほど算出した所得税額に2.1%をかけることで求められます。   復興特別所得税額:基準所得税額72万2,500円×2.1% =1万5,172円 住民税の計算例 最後に住民税の計算をしていきましょう。こちらは先ほど算出した「課税退職所得金額」に住民税率10%をかけることで求めることができます。   住民税額:課税退職所得金額575万円×住民税率10% =57万5,000円 これで退職金にかかる税金が把握できたことになります。ぜひご自身が受け取れる退職金について計算してみてください。   ちなみに、今後転職を考えていてまだ企業が決まっていないという場合にはできるだけ早く見つけるのがベターです。というのも、退職後のブランクが長くなればなるほど企業から内定が出にくくなる傾向があるためです。   「なかなか内定が出ずに困っている」「どんな企業を選べば良いのかわからない」という方は転職エージェントに相談するのが非常に便利です。   転職相談だけでなく求人紹介や選考対策などを講じてもらえるほか、サービスによっては企業へ推薦してくれる場合もありますので、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。 ▼関連記事 「転職エージェントとは」 「転職エージェント おすすめ」

2024.03.22